学力上昇県のひみつ 危機感の共有、PDCAシステムの構築

教育新聞論説委員 千々布 敏弥

このたび、『学力がぐんぐん上がる急上昇県のひみつ』(教育開発研究所)と題する編著を上梓した。具体的には2007年の全国学力調査開始時に都道府県間順位が下位であったのが、その後の取り組みにより上昇している、沖縄県、大分県、高知県、北海道などの学力向上策をまとめたものだ。

調査や先方からの依頼で訪問する中で、それぞれの県の取り組みはある程度把握していた。だが改めてこのたびの編纂(さん)で寄せられた原稿に目を通すと、私が把握できていなかった学力上昇県の共通項が見えてきた。それはすなわち、危機感の共有と他県の視察、PDCAシステムの構築である。

各県の執筆者に依頼状を送るに当たり、ページ数や文体に関するルール以外の執筆の指針はあまり示さなかった。にもかかわらず、各県の原稿はその冒頭で、07年に開始された全国学力調査の都道府県別平均点の比較において、自県が下位にあった事実を厳しく受け止めていることを共通して紹介している。沖縄県は「黒船の来航」、高知県は「厳しい現実」という言葉を使用している。

各県は施策を構築するに当たり、他県を視察した。沖縄県が秋田県に学んでいるのは有名な話だが、大分県も高知県も北海道も秋田県を訪問している。さらに、福井県などの学力上位県も訪問している。他県を参考にしながら県としての施策を構築しているのであるが、その内容はPDCAサイクルと言えるものだ。

PDCAサイクルは学力に関するものと学校経営に関するものがある。学力に関するPDCAサイクルの構築として沖縄県などが導入したのは、各教科の単元ごとにその習得状況をチェックするシステムである。

どの学校でも単元末にテストを実施しているであろう。沖縄県はそのテストを県のWebシステム上に置き、各学校が単元末テストの結果を入力することにより、県の平均との比較ができるようにした。

全国学力調査の結果も、沖縄県が独自に実施している学力調査や意識調査の結果も同じWebシステムに入力することで、県平均との比較が迅速にできる。このシステムにより、学校の正答率が県平均より上位であるのか下位であるのかが即座に分かる。学校の正答率が県平均よりもプラスであるかマイナスであるかの時系列推移を示すこともできるようになる。沖縄県のこのWebシステムは秋田県に倣ったものである。同様のシステムは高知県、北海道においても構築されている。

学校経営に関するPDCAサイクルとは、学校経営計画の策定と、そのチェックとしての学校訪問である。学校経営計画を教育委員会に提出すること、教育委員会が学校を訪問すること自体はどの県でも実施されているが、実を伴っていないものが多い。

沖縄県は改革前に実施していた学校訪問が年間数校程度であったのが、その後年間300校を訪問するようになった。メンバーには義務教育課長が含まれ、時には県教育長が同行することもあった。それにより県の本気度が学校に伝わり、学校の状況を県が直接把握できるというメリットもあった。

大分県は「芯の通った学校組織改善プラン」を策定し、学校経営計画を目標を絞り込んだものにするよう促した。教育事務所のスタッフを増員し、年に3回訪問して学校経営に関する指導を行うようにしている。

高知県は各学校に学校改善プランの提出を求め、教育事務所に新たに配置された学校経営アドバイザーがプランの進捗状況を定期的な訪問によってサポートしていく体制を整えている。

これらの要素を取り入れるだけで、県の体制は変わるはずだ。学力向上を目指しながら成果が出せていない県は、参考にしてはいかがだろうか。