(新しい潮流にチャレンジ)小学校教科担任制の実施は早急に

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

教科の専門性がよい授業を創る

教科担任制実施の小学校は多い

この4月、文科大臣は「新しい時代の初等中等教育の在り方について」を中教審に諮問した。新時代に対応した義務教育や高校教育の在り方、増加する外国人児童生徒の教育の在り方やこれからの時代の教師の在り方、教育環境の整備など、かなり幅広い内容を含んだ諮問である。

その中に、小学校における教科担任制が含まれている。習熟度別指導や先端技術の活用など、多様な指導形態・方法を踏まえた、児童生徒の発達に応じた指導の在り方が課題である。

ただ、小学校の教科担任制については、かなりの学校ですでに実施しているのではないか。2006年の中教審の「審議経過報告」にも、「小学校高学年における教科担任制について検討することが必要である」とする文言が見える。

文科省がベネッセに委託実施した『義務教育に関する意識調査』(2005)をみると、小学校高学年を教科担任制にすることの是非について、「賛成+まあ賛成」は、教員全体では51.8%と半数を超えていた。「まあ反対+反対」は13.7%、他は「どちらともいえない」である。特に賛成の校長は多く、68.3%であった。

当時から、小学校の教科担任制は望まれていたといえる。そのため、どう実施すべきかということで私は図書を編集した(『小学校教科担任制の効果的な進め方』髙階編、教育開発研究所2006)。つまり、小学校教科担任制の実施は珍しいことではなくなっていたのである。

小学校教科担任制のメリットをどう生かすか

小学校教科担任制について、以前から望まれていたのは、次のようなメリットがあると考えられていたからである。

①高学年になると指導内容が高度になり、それに伴って授業が複雑になってくる。また、単に知識を教えればよいのではなく、実験・観察、見学・調査など、多様な学習活動の導入が必要で、全教科担任には大きな負担になっていた。その負担の軽減が大きな要因であった

②教科担任制を実施することで、その教科の学力などが向上する。教師は指導教科が少なくなることから、その教科に専念でき、教材研究が深くなり、指導が充実する。教科固有の学び方を効果的に指導できるようになる

③学級担任制で気づかない個々の児童の問題傾向を教科担任が見いだす、学級崩壊を未然に防止するなど、複数の教員による学年・学級共同経営が可能になる

④いわゆる中1ギャップをなくすためにも、小学校から中学校へのスムーズな移行を進められる。中学校の指導環境に適合できる試みが可能になる

⑤さらに今後、新たな指導形態・方法が導入されると予測できるが、教科専門性による高度な指導への対応が可能になると考える

このようなメリットを踏まえるが、留意したいのは学級担任と学級の子供たちとの人間関係で、私どもが行った場合は、各学年の授業時数の半分以上を学級担任が受け持つものであった。1教科担任制ではなく、複数教科担任制である。

教科担任制への移行は次のようなデメリットもみられるからである。

①子供との触れ合いが指導教科に限られるため、個々の子供理解が十分できにくい

②教科指導の範囲で個人に適応した指導は可能であるが、生活習慣や学習習慣などの全般的な指導が手薄になる

③全教科担任と違って、授業時間を延長したり、授業をやりくりすることが難しくなる。また、教科等横断の調整がしにくくなる

このようなデメリットはあるが、それ以上に教科担任制による授業レベルの向上は大きいと考える。ただ、今のままでは、小学校教科担任制の導入は現有勢力で交換授業などを行うしかない。例えば専科教員が入るだけでも学級担任の負担軽減は大きい。

従って、教科担任制への移行には教員増加が必要である。その場合、学校規模などはかなり異なることから、効率的な運用は学校個々に任せたい。

そこで中教審で論議してほしいのは、すでに学校で実施している小学校の教科担任制の追認ではなく、これからの教育課題に対応する学校の組織体制についてである。

Society5.0に向けて学校教育は大きく変動する可能性が大きいが、その一つの対応策として小学校教科担任制をどう実効性あるものにするか、その論議に期待したいと考える。