(新しい潮流にチャレンジ)個々の職務の自己管理と効率化を目指す

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

「私の仕事デザイン」のすすめ

働き方改革は実効性があるか

中教審は「学校の働き方改革」を今年1月に答申した。ガイドラインで示した「時間外勤務月45時間、年300時間の上限規制」と「年単位の変形労働時間制」導入の提言が盛り込まれている。

ただ、規制を超えても罰則があるわけでなく、容易に規制を超えそうと不安に思う校長が多い。その理由は、教員個々の職務内容が多様すぎて、校長自身も全てを十分把握できないという実態がみられるからである。そのため個々の教員の職務内容は個々に任せざるを得ないということがある。

その意味で学校の働き方改革は、個々の教員の職務の改善に及ぶのでなければ効果が上がりにくいと言える。実効性が伴わないのである。個々の教員が、仕事が軽減された、と実感できることが重要である。

しかし、個々の教員の仕事の軽減は、教員自身の努力に負うところが大きい。自分の職務内容に応じて、何を優先し、何を軽減するか、などの判断は個々でしかできない場合が多い。

ただ、誰もが実施できるのは外部からの規制、つまり時間外規制などを忠実に守るかどうかである。これまで時間外勤務の規制がなかったために、恣意(しい)で判断せざるを得なかったが、規制を設けることで、そこに一つの大きな目安ができたことは確かである。

教員は自己の職務全体を十分把握しているか

だが、教員自身もまた自己の職務内容を十分把握しているであろうか。

学校には細かな校務分掌がみられる。例えば、教務部、指導部、研究部、庶務部、管理部、経理部、渉外部、福利厚生部、などである。それらにさらに係が位置付けられる。また各種委員会がある。教員が30人程度の規模の学校でもそうである。

教員個々はどこかに位置付けられるが、いくつかの部にまたがることは普通である。

例えば、ある小学校のA教諭は、2年1組の学級担任で学年主任、さらに低学年ブロックのチーフ、指導部の部長で教務部にも属している。算数の担当者で、研究推進委員会のメンバー。他に運営委員会、行事委員会に所属している。

ただ、自分の職務全体を明確に把握し、それぞれの職務を十分成し得ているか、と言えば疑問が残る。自分の職務全体を十分把握しているとは限らないのである。そのため、場当たり的な仕事の進め方が多くなる。私は多忙化が課題視される以前から、多忙化に向けて教師は効率的な職務を行うべきだと言ってきた(『教師の仕事術』髙階著、教育新聞社2011)。

誰もが職務マネジメントが必要で、仕事そのものを効率化するためのポイントが主に3つある。①ToDo管理(やるべきことのメモの活用)②自分の仕事全体を把握できる「私の仕事デザイン」③スケジュール管理としての「月計画表づくり」――である。

特に①と③は、私が小学校教員時代実施していて極めて有効なものであった。当時はToDoの言葉はなかった。また現在発行されているプランニング・ノートもなかった。31罫(けい)の大学ノートを使っていた。

ただ、②は私の試みではなく、埼玉県川越市の教育研究所に出向いたとき、そこで実施されていたものである(『仕事を図解する』川越市教育研究所、2004年)。それを千葉県浦安市の研修で実施したのが右の図である。

小学校の教務主任の職務を図解しているが、驚くほど緻密に描かれている。学年主任や学級担任の図解はここまで細かではない。

教務主任の場合、これら全てについて職務を行っているわけでない。実際に行う業務は多いが、指導・助言業務や、他の教員への連絡、相互関連業務もある。

ただ、教務部に関連する全ての業務を把握すればこのような図解になるであろう。他の教務主任の場合も図解は若干異なったが、同じように細かなものであった。

実のところ、学校の校務分掌は示されているが、教員個々が自分の職務をこのように図解することはほとんどないであろう。「私の仕事デザイン」は、その意味では職務明確化であり、個々の職務についての自覚を深めるものである。

多忙化の軽減はどうすれば可能か

職務を図解する意図は、それに基づいて月の計画を練ったり、毎日の仕事のToDo管理を進めたりすることである。実際に作成した教員は、職務遂行がスムーズになると言っていた。仕事が計画的に進むから、先の見通しができ、教員との相互関連業務への相談事項にも積極的になれる。多忙化も軽減する。

ただ、そのときの教務主任は、個々の仕事がもっとよりよくできないか、さらに向上したいとする考えを示していた。仕事を単にスケジュール的に実施すればよいというのではなく、教務部の職務をより充実したいというのである。

際限がない職務遂行努力である。

教員には、授業が上手になりたい、子供をもっと喜ばせたい、生徒指導のよいやり方を身に付けたい、仕事を効率的に進めたい、など上昇志向が強い傾向がある。

それは決してなくしてはいけない教師の姿勢だが、今後は時間外勤務を極力抑えた中での職務遂行になる。ただ、ムダ・ムラ・ムリという「3ムダラリをやめよう」という声はあっても、何がムダなのか、抽出するのに悩むのではないか。

しかし、ライフ・ワーク・バランスを重視する必要があって、毎日明るく子供と接するためには、優先順位を決め、ムダ・ムラ・ムリをカットする必要がある。そのためには「私の仕事デザイン」を行って、仕事全体から必要度の低い仕事をカットしていくのが重要と考える。