少年院教育の変化 時代に合わせたものへ

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

6月、NPO法人育て上げネットを通じて愛媛県にある少年鑑別所「松山少年鑑別所」、少年院「松山学園」、そして香川県にある女子対象の少年院「丸亀少女の家」に訪問する機会を得た。

私自身、これまでも同NPOを通じて東京都「多摩少年院」、茨城県「茨城農芸学院」などを訪問させていただき、法務教官の許可を得てパソコンを教えたり、在院者に菓子を送ったりした。

今回は、最近の少年犯罪の状況を共有した上で、少年院における教育に焦点を当ててみたい。同施設における教育というテーマは、ほとんどメディアで取り上げらない。被害者のいる在院者への支援を快く思わない人がいることも一因だろう。

ただ、彼らの罪を犯した背景を聞くと、加害者になる前に彼ら自身が被害者であったことが少なくない。退院後、彼らが納税者として立派に社会で生きていくために、少年院における教育は非常に重要だと考えている。

少年犯罪の現状

2018年版の「犯罪白書」では、少年による刑法犯は全体として減少傾向にあり、17年は戦後最小の5万209人(前年比11.5%減)。昭和の時代は多いときで約32万人もいたことを考えれば、その減少は一目瞭然だ。

少年犯罪の減少は人口減少によるものではないかと考える人もいるかもしれないが、人口比を考慮しても減少傾向がみられる。少年院入院者数は、00年の6052人をピークに減少傾向で、17年は2147人だった。

入院者の理由を見てみると、男子の特徴として暴力や詐欺が多いのに対し、女子は覚醒剤などのクスリや虞犯(ぐはん=将来犯罪を起こしそうな事案)で少年院に送致されてくる場合が多い。

保護者の状況を見てみると、実父母である者の構成比は、17年は31.4%で20年と比較すると5.9ポイント低い。一方、保護者が実母のみの構成比は、17年は42.5%で08年と比較すると4.8ポイント高い。

今回の訪問で法務教官の方々とじっくり話す時間があったのだが、「日本は商店街があったから少年犯罪が少ないと言われている。もし商店街で万引をしたなら、この子はどこの家の子供だとすぐに特定され通報される。家で物を盗んでは駄目だと親からこっぴどく叱られ、万引はいけないことなのだと身をもって知る。地域社会がきちんと機能していると、少年犯罪というのは少ない」という話が印象深かった。

過疎化していく地域が増え、商店街が消失してきている今、地方創生の観点だけではなく、地域社会を通じた教育という観点からも過疎化が喫緊の課題であることが分かる事例だ。

少年院における教育

少年院における教育の主軸をなすものが、矯正教育と呼ばれているものだ。在院者は生活指導、職業指導、教科指導、体育指導および特別活動指導の領域について指導がなされる。

生活指導では、夜型の生活習慣の改善や、薬物非行防止指導などが行われる。

職業教育では、土木・建築科、手芸科、電気工事科、自動車整備科、情報処理科などが設けられ、パソコン講習も行われている。在院者はネットを使うことができない。そのため、事前にパソコンにインストールできるソフトを使ってタイピングの練習をする。

仕事に直結するスキルということで、在院中にフォークリフトなどの資格を取る人が多い一方、スーツを着てパソコンを使う仕事を希望する人も増えていると聞く。情報処理に関する免許・資格を取得する在院者もいるという。

教科指導では、義務教育課程の在院者については学習指導要領に準拠した指導が行われる。高等学校卒業認定試験は院内でも実施されており、17年の受験者数は588人、高卒認定合格者が191人だった。丸亀少女の家ではなぎなたを使ったダンス指導など、多種多様な指導も実施されている。

少年院を巡る課題

今回の訪問でも、法務教官の方たちが親身になって在院者を支援していることがよく分かった。一方で、少年院を巡る課題も存在する。

一つ目は、職のマッチングだ。法務教官が企業に足を運び開拓しているが、在院者の希望とのマッチングがより良いものとなるためには社会の理解が欠かせない。

二つ目に、第三の文化に触れる機会が少ないことだ。少年院側で地域の方に講演してもらったり、音楽活動家に演奏してもらったりしているが、新しい文化や風に触れる機会がもう少しあればと思う。

三つ目に、コンピテンシーとしての学びが少なく感じることだ。例えば、論理的考察、問題発見力などを養う機会が、もっとあっても良いのではと感じた。

(スタディサプリ教育AI研究所所長/東京学芸大学准教授)