丸山洋司氏の文科省初中局長就任 今後の方向性考えるきっかけに

教育新聞特任解説委員 鈴木 崇弘

7月2日付の本紙電子版に「【文科省人事】初中等教育局長に丸山洋司氏」という記事が掲載された。

掲載された写真を見て、「見覚えがある」と思い、記憶をたどると、法政大学の大学院で教鞭(きょうべん)をとっていた際の院生だと思い出した。

当時、丸山氏が文科省に勤務していたことは知っていたが、その経歴は知らなかった。

ただ、国家公務員で多忙にも関わらず、非常に真面目で、授業にもできる限り出席し、熱心に学んでいて、「毎回、新しい刺激を頂きながら、大変興味深く受講させていただいています」というお話も伺っていた。

またその後、何度かメールなどでやり取りさせていただいたこともある。

破壊的な人事

記事によれば、「丸山氏は総合職以外のいわゆるノンキャリアで、局長級に総合職ではない職員が就任するのは文科省で初めて」という。

中央省庁では、これまで特定のポストは別として、いわゆるノンキャリアが局長になることはまずない。それは、明治時代にできた日本の公務員制度の鉄則に近く、これまで連綿と続いてきていた。

しかも今回、丸山氏が就任した初中局長は、文科省の局長の中でも、義務教育を所管する局なので、局長内でもトップといえるポジション。

各省庁には省庁ごとに、局や部課に厳然たる序列があることを考えると、今回の人事は、日本の公務員制度では「破壊的な出来事」といえる。

同記事によれば、柴山昌彦文科相は閣議後会見で、「一連の不祥事を受けて3月に取りまとめた『文部科学省創生実行計画』において、採用区分や年次、年齢にとらわれない資質、能力、適正に応じた人事配置の徹底など、人事改革の取り組みを推進している。その一環として今回の人事において、初等中等教育行政の経験が豊富な丸山洋司審議官を初等中等教育局長に登用することにした」と説明した。

これは、近年不祥事やさまざまな問題が起きたからの人事とも言えるし、そのような人事までせざるを得ない状況に同省があったともいえよう。

しかし、社会や組織が大きく変わるにはきっかけが重要だ。この人事は同省のクリーンヒットともいえるのではないかと思う。

公務員制度の変革の必要性

ぜひこのような人事は、今回だけにせず、優秀な人材なら、キャリア、ノンキャリア(現在はこの仕組みはなくなっている)、総合職、一般職に関わらず、入省後、公務員として優秀であればどんどん抜てきされていいと思う。

従来の公務員制度のように、学校卒業時の試験だけでキャリアや昇進が決まるのは、公務員の適正性や能力、職員全員のモチベーションなどを考えても、再考されるべきだろう。実際近年は、省庁でもキャリアトラック変更の仕組みもつくられてきている。

また、短期間で社会が大きく変わるこの時代には、一つの組織やクローズドの仕組みで、人材育成と社会変化に伴う組織変え、それに応じた人材確保をするのはほぼ無理だ。従来以上に、中途採用などの障壁を下げるべきで、さらにドラスチックな対応が必要だろう。

丸山氏は大学院で社会人として学ばれていたが、今後省庁の幹部になるには、大学院卒業ぐらいは、その専門性や国際的水準からしても必要だと思う。少なくとも修士号、できれば博士号の取得は必須にしてもいいのではないか。近年は、社会人が働きながら、夜や週末に学べる大学院なども増えている。

今後はさらに社会変化が起きると予想されるので、大学の学部などで学んだだけでは不十分で、人生で何度も学び直すことが必要となる。その意味からも、少なくとも公務員はこの方向に進むべきだと考える。

モデル構築のために

そして、もう一点。日本は明治以降、極論すれば絶えずキャッチアップ段階にあり、追いつくべきモデルとなる先進国があった。

だが、現在の日本はもうその段階ではない。自身でモデルをつくり、その実現のための政策を独自に構築する必要がある。

そのためには現場のデータを集め、それを理解・分析できる人材が必要で、そうした能力・経験がある人材の採用にシフトする必要がある。

また政策作りでも今後、ビッグデータやAIなどの重要性が高まるので、公務員にはその分野への知見・理解やスキルなども求められるべきだ。

いずれにしろ、丸山氏の局長就任に祝意を表したい。それと共に今回の人事を、公務員の人事や人材における、これからの方向性を考えるきっかけにすべきだと強く感じる。

(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)

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