人権教育 学び直しの継続を

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

この人たちは人権教育を受けてきたのだろうかと、耳を疑うことがよくある。

出生数増加に関する国会議員の女性に向けた発言、街頭での外国人に向けたヘイトスピーチ、企業内のさまざまなハラスメント問題。学校内では後を絶たない子供たちのいじめ問題、特別支援が必要な子供への差別発言、さらには教員による児童生徒への差別的な言動や体罰問題、家庭ではネグレクトや暴力などの虐待……。

人権感覚や人権意識が問われる事態が日常的に発生している。人権教育は機能しているのだろうか。

東京都教育委員会の「人権教育プログラム(学校教育編)平成31年3月」では、人権感覚について次のように示している。

「人権の価値やその重要性にかんがみ、人権が擁護され、実現されている状態を感知して、これを望ましいものと感じ、反対に、これが侵害されている状態を感知して、それを許せないとするような価値志向的な感覚」。

また人権意識について、「自他の人権が尊重されていることの『妥当性』を肯定し、逆にそれが侵害されていることの『問題性』を認識して、人権侵害を解決せずにはいられないとする意識」と紹介している。これらをしっかりと踏まえたい。

前述のような人権に関わる問題を見聞するにつけ、その感覚や意識の薄さ・低さに驚かされる。しかし、他人事ではない。知らず知らずのうちに気付かないところで、見逃していたり、同調していたりしてしまっていることがある。

子供のころにいつのまにか刷り込まれている見方・考え方もある。それだけに学校教育において意図的、計画的、組織的、継続的、発展的、さらには徹底的に人権感覚を磨き、意識を高める重要性を共通理解する必要がある。

先の人権教育プログラムでは、教育の目標を「一人一人の幼児・児童・生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解し、自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるようになり、それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるとともに、人権が尊重される社会づくりに向けた行動につながるようにすること」としている。

学校でいじめが起こるのは、まさにこの目標が実現できていない状況であろう。人権教育の重要性を認識し、一層取り組むことが求められる。社会づくりは学校・学級づくりである。

人権教育プログラムでは人権に関わる普遍的な概念を念頭に置き、人権尊重の理念について指導する「普遍的な視点からの取り組み」と、人権課題に関わる差別意識の解消を目指して指導する「個別的な視点からの取り組み」の両面を求めている。各学校の実態に即した両者のバランスのよい取り組みで、人権教育を通じて育てたい資質・能力の育成を目指すとしている。

人権教育に取り組んでいる学校では、教師たちが両方の視点からアプローチし、単元の目標・内容に即して人権教育の視点を設定し、授業に当たってはその視点を具現するための留意点を明示して、指導の工夫に努めている。

これにより意図的・計画的な指導が可能になり、指導の積み上げもできる。長い目でみれば、この積み上げが人権感覚や人権意識を育む教育となっていく。

人権教育を積み上げている学校では、研究・研修の過程で教員たちから、「改めて人権教育の大切さを学びました」という声をよく聞く。

重要性は教師なら誰しも知っていよう。しかし、常にその本質を継続して学び直していかないと、いつのまにか錆(さび)ついてしまいかねない。改めて学ぶことを忘れず継続していきたい。