消費者教育の推進 構造的な課題解決に向けた検討を

教育新聞論説委員 工藤 文三

消費者市民社会の形成

私たちの毎日の消費行動は、自らの生活の内容を決めていくと同時に、商品やサービスの選択を通じて、経済や社会の在り方を方向付けていく。

選挙における投票が政治の面での選択行動であるのと同様、消費者一人一人の日常の選択が、現在のみならず未来社会の在り方にもつながる。

2012年に公布された「消費者教育の推進に関する法律」では、「消費者市民社会」の概念とともに、消費生活に関する知識を修得し、これを適切な行動に結び付けることができる実践的な能力の育成を目指すという方向性を示した。

また、消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画し、その発展に寄与できるよう、消費者市民の育成を支援することを明確にした。

この法律を受けて、「消費者教育の推進に関する基本的な方針」が13年6月に閣議決定された(18年3月に変更)。15年9月には、持続可能な開発目標(SDGs)が国連で採択され、17の目標のうち多くが消費者市民社会の形成と関連している。

社会状況の変化と消費者教育

社会の急速な情報化が進む中、インターネットを利用している個人は約80%、SNSを利用している個人は約60%(情報通信白書19年版)となっている。国内の消費者向け電子商取引の規模は18.0兆円となり、商取引全体に占める割合も増加している。

ところで、18年6月の民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、22年から施行される。施行後は18歳になった時点で親の同意を得ずに、自ら契約を締結することが可能となる。

国民生活センターが発表した情報(16年10月)によると、成人の消費生活に係る相談事例では、サイドビジネス、マルチ取引、エステが上位になっている。

相談事例にみられる問題点として▽契約に関する知識が乏しいことに乗じて契約をさせられてしまう▽「絶対もうかる」など、うまい話に弱い▽業者が断りにくい状況を意図的につくり、断り切れない場合がある▽借金やクレジット契約を提案するなどして高額な契約をさせられてしまう――などを挙げている。

今後、成人年齢が18歳に引き下げられると、このような問題事例が増えてくることも予想される。

推進上の構造的課題の検討を

前述した「消費者教育の推進に関する基本的な方針」では、消費者教育を幼児期から高齢期まで各段階に応じて体系的に行うこと、各主体の連携・協働、環境教育や食育その他の関連する教育との連携・推進などが示された。

小学校から高校までの間の消費者教育を主として担うのは学校教育である。16・17年に改訂された学習指導要領では、社会科、家庭科(家庭分野)、公民科などにおいて消費者教育に関わる内容の充実が図られている。

一方、国民生活センターが発表した「成年年齢引き下げに向けた消費生活センターの対応に関する現況調査」によると、最も多い課題は「学校や教育委員会等の関係機関との連携が難しい」となっている。

さらに学校との連携に関する課題では「学校の授業時間に余裕がない」「教員や教育委員会等の担当者が多忙である」が多くなっている。

関係教科における消費者教育の内容の充実が図られているものの、複数の教科で別々に実施されるというカリキュラムの課題は残されたままである。また、学校教育と消費生活センターなどとの連携についても、課題が指摘されている。

22年からの成年年齢引き下げに向けて、消費者教育推進の構造的な課題を解決するにはどうしたらよいのか、さらに検討を進める必要があると考える。