(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース)小学校への教科担任制の導入

子供の側に立った視点で論議を

中教審は、初等中等教育の改革を審議している。その中も焦点の一つは、小学校への教科担任制の導入だ。本紙電子版「Edubate(読者投票) 教科担任制と学級担任制 どちらがいい?」では、75%が教科担任制を支持するという結果が出た。この結果をどう受け止めたらよいのか。

高学年の指導は一人では限界

読者投票では、小学校の教科担任制の導入について、賛成が75%、反対が20%、「どちらでもない」が6%という結果となった。正直にいうと、やや意外だった。小学校関係者は、もう少し「学級担任」に愛着と誇りを持っているのではないかと思っていたからだ。

ただし、読者投票の質問は、「小学校高学年においては教科担任制と学級担任制、どちらがいいと思いますか」と聞いたものだ。中教審の審議でも小5・6の高学年を教科担任制の対象に想定している。つまり、7割以上が教科担任制に賛成という投票結果は、「小学校高学年」に限った場合ということになる。

言い換えれば、現在の小学校高学年の子供たちを学級担任の教員一人で全て指導するということに、小学校関係者の多くが限界や困難を感じているのだろう。

原則論でいえば、小学生の発達段階を考慮するなら、教員が一人の子供を授業や生活面で長時間観察できる学級担任制の方がよい。だが、子供の発達には個人差があり、加えて家庭や社会が複雑化している現代では、高学年になるほど学級担任一人では手に余るようになる。それが小学校教員の長時間労働の要因の一つともなっている。

若手教員の指導力低下などが背景か

教科担任制のメリットは、専門の教員により内容の高い授業が行えること、複数の教員により子供たちを多角的な視点で見られるようになることだ。新学習指導要領では、教科内容の高度化が図られている。いじめや暴力行為など小学校でも生徒指導が必要になっている。教科担任制は、小学校高学年には必要かもしれない。

また、「母親的」な小学校教育から、「父親的」な中学校教育への移行が円滑となり、「中1ギャップ」の解消という効果も期待できる。

これに対して、小学校の強みともいえる、学級担任がほとんどの教科の授業を教えることで可能になる教科等横断的な指導や、生活面の観察を授業に生かした丁寧な指導が、教科担任制では困難という批判もある。ただ、教科担任制反対の声は、学級担任制を支持する声の裏返しと言えなくもない。

小学校の学級担任は、いわば「職人芸」の要素が多く、自己研さんによる技術の向上が求められる。ところが現在、ベテラン層の一斉退職による若手教員の急増、小学校教員採用試験の競争倍率急減による若手教員の指導力低下の懸念という問題を小学校現場は抱えている。教科担任制賛成の声の裏には、急増する若手教員への懸念もあるのではないか。

「教える側の都合」ではなく

これらの教科担任制を巡る問題は、「教える側の都合」でしかない。重要なのは、子供にとってどうかということだ。

教科担任制を導入しても、現在の一般的な小学校規模から算出した教員定数を考えると、全ての教科で教科担任をそろえるのは不可能だ。

実際には、高学年で教科化される英語の専科教員、プログラミング教育などに対応する算数や理科の専科教員を配置するため、中学校免許と小学校免許の一部を一本化するなどの小手先の改革が中教審で答申される可能性もある。

そうなれば、実質的には中学校教員が数人、小学校に異動してくるだけで終わってしまうことにもなりかねない。これが子供にとって本当に良い改革だと言えるだろうか。

新学習指導要領の英語やプログラミングを教えられないから学級担任制より教科担任制の方がよい、教科担任制になれば少しだけ教員配置が増えて仕事が楽になるかもしれない――などの視点だけで小学校の教科担任制を考えるべきではない。

小学校教育とは何なのか、小学校における指導はどうあるべきなのか、ひいては義務教育はどうあるべきなのか――という子供の側に立った視点から、教員定数の抜本的改革を含めて、小学校高学年の教科担任制導入の是非を考えなければならないのではないか。