カリキュラム・マネジメント 基準の対象の拡大が必要

国立教育政策研究所総括研究官 千々布 敏弥

新しい学習指導要領の実施に当たり、カリキュラム・マネジメントをどうしたらよいか迷っている学校は多いのではなかろうか。

学習指導要領は「各学校においては、児童や学校、地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと、教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくことに努めるものとする」と記している。

この規定を受けて、教科横断カリキュラムを作成することがカリキュラム・マネジメントだ、と解する学校が一部にみられる。

学習指導要領総則第1の第1項は「各学校においては、教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの章以下に示すところに従い、児童の人間として調和のとれた育成を目指し、児童の心身の発達の段階や特性及び学校や地域の実態を十分考慮して、適切な教育課程を編成するものとし、これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする」と、教育課程編成について規定している。

その後に第4項として上記のカリキュラム・マネジメントの規定が記されているから、教育課程編成を包含する概念としてカリキュラム・マネジメントが登場したと考えた方がいい。

あくまでも第一に考えるべきは「教育課程編成」であり、それに加えて各教科等の年間指導計画を横断する、学校として育てたい資質能力の育成や、学校全体の経営事項への視野を広げることなどを求めてカリキュラム・マネジメントの語が登場したと解するのが妥当だろう。

すると、総則第1項における「教育課程を編成する」を「教育課程を編成・実施・評価し、そのために必要な諸条件を整備する」などの語に変えてカリキュラム・マネジメントの意味を持たせてもよかったのではないかという疑念が湧いてくる。それには教育課程の語の持つ法的性格への理解が必要だ。

古い話で恐縮だが、文部省行政官(最終キャリアは初中局審議官)から大学教授に転出した奥田真丈氏が1982年に刊行した『教育課程の経営』(第一法規出版)では、教育課程の定義を「教育課程に関する法規に従い、各教科、道徳、及び特別活動について、それらの目標を達成するように教育の内容を学年に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画」と記した。今日的文脈で言えば、各教科、道徳、特別活動に加えて外国語活動と総合的な学習の時間も含められる。

学校教育法は「小学校の教育課程に関する事項は(中略)文部科学大臣が定める」と規定している。また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律は教育委員会の職務権限の一つとして「教育課程に関すること」を規定している。

教育課程とはこれらの法律が規定している法令用語であり、学校がそれを超えて実施している学校独自の教育活動(朝の会、帰りの会、学校掃除、部活動など)は教育課程とは別という解釈が長らくとられてきた。

しかし、学校の教育活動は登下校の見守り隊やゲストティーチャーなど地域との連携が不可欠になってきている。部活動を教員の自発的な活動と解するにはあまりにも教員の業務に占める割合が大きくなっている。

これらの議論が教育課程の語の背後にある。カリキュラム・マネジメントの語の登場は、これまで国が示してきた教育課程の基準について、その対象を拡大することが新しい学習指導要領の実施には必要との認識が背後にあったのでは、と推察する。そう考えれば二つの語の併設状況を理解できるのではないか。

なお、以上の考察は私独自のものであって公的なものではない。