(注目の教育時事を読む)第62回 小学校部活動の廃止

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藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

教員が担うべき仕事の検討を

◇学習指導要領にもない活動は廃止が妥当◆

本紙7月12日電子版で報じられているように、愛知県豊橋市で小学校の部活動廃止が決まり、県内で同様の動きが広がっている。

中学校や高校とは異なり、小学校に部活動が設けられているかどうかは、地域によって異なるようである。設置率などの調査結果は見つけられないが、千葉県においても市町村ごとに小学校の部活動が活発なところとほとんどないところに分かれる。

そもそも、現在の小学校学習指導要領に部活動に関する記述はない。従って、小学校の部活動に法的根拠はないと言ってよい。なお、中学校・高校については、部活動は課外活動であるものの、学校教育活動の一環であると学習指導要領に明記されており、一応法的根拠がある。

教員の多忙が大変な問題となっている中で、法的根拠のない小学校の部活動を継続すべき理由はないように思われる。もちろん、熱心に部活動に参加している小学生にとっては有意義なものであろう。だが、いくら有意義だからといって、多忙な教員に負担をかけて継続する正当な理由にはなり得ない。

前回、当欄で取り上げたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018では、日本の小学校教員の1週間当たりの仕事時間の合計は54.4時間と調査対象国で圧倒的な1位であり、法定労働時間を36%も超過して働いていることになる。給特法で給与の4%の教職調整額が上乗せされているとはいえ、仕事時間の長さは異常だ。

法的根拠がないといっても、部活動があれば教員は監督責任を問われる。世界一多忙な日本の小学校教員に、法的根拠がなく責任だけ負わせるような仕事を委ねてよいはずはない。多忙が問題になっている中で、小学校の部活動を継続しようとしている地域や学校があるとしたら、その方がおかしいのである。

こうした議論に対して、部活動をやりたい教員もいるのだから、顧問を担当するかどうかを希望制にして、やりたい教員だけがやるようにすればよい、という意見がある。教員の働き方に余裕があるのであれば、教員が余暇時間を使い、ボランティアとして部活動指導をするのはよいかもしれない。

だが、仮の話でこうしたことを論じてもあまり意味がないだろう。学校における働き方改革は、まだまだこれからである。

◆廃止の分だけ教員の負担の純減を◇

豊橋市の小学校部活動廃止の記事に、気になる記述がある。部活動を廃止し、「児童一人一人に合わせた学習指導を充実させたい考えだ」と書かれているのである。部活動廃止によって、教員の業務にどれだけ余裕が生まれるというのだろうか。豊橋市の教員は、部活動の負担がなくなれば、1週間当たりの仕事時間が40時間程度に収まるようになるのだろうか。

そうであれば新たな負担を教員にかけてもよいだろうが、仮にそうでないなら部活動廃止の分だけ教員の負担を純減させるのが筋であり、新たな負担をかけてはならない。

小学校の部活動を廃止することによって、子供たちが自らの希望に応じてスポーツなどの活動を行う機会が失われる可能性がある。だが、放課後の子供たちの活動は、そもそも放課後児童クラブや放課後子供教室によって充実が図られており、また総合型地域スポーツクラブや民間のスポーツチーム、スポーツ教室もある。放課後の子供たちの生活の充実を担うべきなのは、学校の教員ではない。地域に十分な資源がないのであれば、資源の充実こそが図られるべきだ。

TALISの結果では、日本の小学校教員の課外活動の指導時間は週当たり0.6時間であり、他国と比較しても決して長くはない。一部の学校では教員の部活動指導時間が長いのかもしれないが、平均値では長くない点に注意しておく必要がある。

部活動活動が、学校における働き方改革の切り札になるわけではない。小学校教員については、授業の持ち時間、事務業務や学校運営の負担の軽減などを進めなければならない。

◇豊橋市の決定が持つ意味は小さくない◆

小学校の部活動廃止が進めば、中学校や高校における部活動の縮小や廃止が現実味を帯びるであろう。中学校や高校でも、学習指導要領で言及があるとはいえ、部活動はあくまでも課外活動であり、多忙な教員の負担を増してまで実施すべきものとはいえない。

そして、TALISの結果では、日本の中学校教員の課題活動の指導時間は週当たり7.5時間であり、次に長い南アフリカ共和国3.3時間の2倍以上もの時間を課外活動に割いているのである。少なくとも中学校においては、部活動の縮小や廃止は、教員の仕事時間の短縮に大きく貢献する。中学校教員の課外活動指導時間を他国並みの週当たり2時間前後に抑えるよう目指す必要がある。

小学校における部活動廃止は、学校があるべき姿に変わるための第一歩にすぎない。だが、これを端緒として、教員が本当に担うべき仕事の検討が進み、小学校においても中学校や高校においても、学校の在り方の見直しにつながる可能性はある。

この意味で、豊橋市の決定が持つ意味は、決して小さくないはずだ。