資料「シン・ニホン」 現在と今後の日本のリアル

教育新聞特任解説委員 鈴木 崇弘

筆者の手元に、「“シン・ニホン”AI×データ時代における日本の再生と人材育成」と題する資料がある。

2018年11月27日開催の教育再生実行会議技術革新WGにおいて、ヤフーCSOであり、慶應大学環境情報学部教授の安宅和人氏が報告に使用した資料だ。

同氏は、現在のテクノロジーが社会や世界を大きく変貌させる状況の中で、最先端で活動を続け、教育や人材育成にも関わっている。

今後の日本における教育を考える上での多くの論点に関わるので、ややこしく長くなるが、そのポイントを説明していきたい。

同資料は、次の点から構成されている。

資料のポイント

①世界や日本の現在や近い将来の状況:「全産業がデータ×AI化」、人間のデザイン可能化、中国語の世界語化など。

②歴史的局面:日本は企業・経済・生産性で世界に負けている。

③科学・技術面の日本の位置:論文数やインパクトなどでインドや韓国にも後塵(こうじん)を拝す。物理学や計算機科学でも低位置。日本の大学の評価の急激な低下。

④急激に相対的な国力衰退:ビッグデータ技術やディープラーニング(DL)は海外中心。DLでは米中が2強。日本は、ICTエンジニア人材は質量共に問題や課題が多く、理工系学生や深い分析訓練のある大卒者の数も少なく、データサイエンスのプログラム数も海外と比べ極端に少ない。海外は、計算機科学は標準的学習対象科目化。日本は、高等教育受講者も、情報処理やプログラミングの基本的理解がなく、基本的サバイバルスキル未修得。

⑤日本の若者は武器を持たずに戦場に行っている:サイエンス層の質量変化の必要性およびチャンスや危機、大きな変化の無理解、ビジネスとテクノロジーをつなぐ新ビジネスの未構築、変化対応可能スキル未習得のミドルやマネジメントの存在で戦える人材育成土俵にない。

⑥必要な人材:富や価値創造のメカニズムが変化する中、「夢を描き全体を構想する力がこれまで以上に重要」で、「課題(夢)」「技術」「デザイン」の三つが問題解決し未来を構築するが、それがわかる人材育成が必要。そのため学校教育を超えた異才の引き上げや、高校、学部から起業家精神教育実施の必要性。

⑦データ×AI文脈ではどうか?:今後は手に入るあらゆるデータからコンピューティングパワーを利用し、学び活用する人が重要。その人材育成にはデータ×AIのリテラシーを含む、新しい基礎教養の構築が必要。複数専攻した境界や応用領域の人材、広義のデザインの素養育成が必要。人材活用の研究資金の増強し海外の才能も取り込む。

⑧初等・中等教育はどうか?:分析的、論理的に理解し、課題を出し考え構築し、明確に口・文で伝えられる思考や、表現の武器としての国語刷新の必要性。基礎と自信を得られる中等教育の質担保。データ×AIの力を含む基礎要件とリテラシーを基に、知覚力・生命力・人間力の育成。皮膚感覚、ナノの経験、ぶつかり合いを通じて得る力の獲得。課題解決の基本の、科学的素養の獲得。目的を教える教育・教養の基本の育成・自己の確立・再教育・指導要領の短期間レビュー・教員再生の仕組み化・反転教育・付加価値重視の教育・付加価値と社会との関係の、体験的理解のある教育・基礎的数学の全員必修化・データの活用の学習・夢×技術×デザイン視点でモノやサービスの創造教育・データドリブンで個々人化した教育・書き話せる的確な表現力育成・中国語教育導入。

⑨高等教育・研究開発はどうか?:国力に見合うR&D投資の不在。競争力ない高等教育予算。乏しいグランドチャレンジや博士号取得者減少。米中と戦えると思うのは非現実。大学の教員も学生も予想では低レベル。

⑩国力見合う人材開発・R&D資源投資の不在:抜本的な高等教育の仕組みや組織の改編が必要。国力強化の国家基金構築構想。「必要となる人材モデルの刷新」「未来と成長に十分な資源を」「未来に向けたバランスある投資へシフト」し負のサイクルを「本来のもの」に変換の必要。

資料から言えること

この資料は、衝撃的で過激なようにみえる。

だが筆者は、この数年テクノロジーの進展に注目し研究すると共に、中国の深センやイスラエルなどの大きな変化のある地域や国を訪問し、現地を調査・研究している。

その経験や知見から、安宅氏の指摘には同意できるし、その視点や対応は当然であり、決して過激でないと断言できる。また教育に携わる者として、肝に銘じておきたい点も多い。

同資料は、ネットからもダウンロードできるので、読者には、ぜひ読んでいただきたいと思う。

(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)