アフリカの発展 もはや途上国ではない

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

今日8月28日から、横浜において日本政府が主導する第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催される。参加者数約4500人以上の大規模なイベントだ。同会議が1993年に始まり26年が経過した今、アフリカはさまざまな領域で大きな変貌を遂げている。

15年ほど前、私はアフリカ北部にあるチュニジアにアラビア語を学ぶため短期留学した。その頃に同地域を少しまわったが、自身が持っている当時の情報を「五感」で更新するために、年内にアフリカを再訪する予定だ。

アフリカの人口は、国連によれば2050年には約25億人になると推測されている。経済の中心も、人口が増加するアジアやアフリカに移動しつつある。アフリカの優秀な人は、以前は同地を脱して先進国で就職していたが、現在は先進国で学業を修めた後同地に戻って母国の発展に寄与する人も増えたと聞く。今回はそのアフリカ、特に「アフリカのシンガポール」を目指すルワンダについて言及したい。

「途上国」は途上国ではない

今春邦訳されてベストセラーになった本がある。昨年5月に米国で発売されたハンス・ロスリング氏の『FACTFULNESS』だ。ビル・ゲイツ氏は同書を読み、「われわれは事実に基づいた議論をするべきで、もはや途上国という言葉を使うべきではない」と話している。彼の絶賛ぶりはものすごく、大学学部や院を修了した学生に無料でコピーを配布しているほどだ。

私も読んだが、自分が持っている情報は、かなり更新されていないことに気付いた。同書の冒頭で、世界の現況に関する読者への13の質問がある。次はその抜粋だ。皆さんは正解できるだろうか。

①世界中で低収入とされている国々において、女子の小学校修了率はどのくらいか

②現在の世界の寿命はどのくらいか

③国連は2100年までに世界の人口は40億人増えると見込んでいる。何がその主要因か

④世界では30歳の男性は平均して10年学校で教育を受けている。同じ年齢の女性はどのくらいの期間、教育を受けているか

⑤世界で電気にアクセスできる人の割合はどのくらいか

ハンス氏によれば全問正解者は皆無で、12問正解したスウェーデン人がただ1人いたという。途上国は、もはや途上国ではなく、着実に発展している。

「アフリカのシンガポール」ルワンダ

「途上国」と位置づけられてきたアフリカのルワンダも、AIを包含したコンピューターサイエンスの活用や人材育成に積極的だ。ルワンダと言えば、2004年に公開された『ホテル・ルワンダ』を想起する読者も多いだろう。

同国内で94年に発生したフツ族過激派が、同族の穏健派やツチ族を120万人以上虐殺し、1200人以上を自分が働くホテルにかくまった従業員ポール・ルセサバギナ氏の実話に基づいたノンフィクション映画だ。

私自身、「ルワンダ」という言葉を耳にするとその印象が強いが、虐殺事件から20年以上たった現在のルワンダは、全く違う様相を呈している。

公用語に英語が追加されて09年に英連邦に加盟したり、血液製剤の輸送目的でドローン空港の整備を進めていたり、最短6時間で登記完了できるよう法人手続きを簡素化したり。極めつけは同国の紙幣にパソコンを操作する子供たちの絵が描かれていることだ。

2000年にICT立国を目指した2020年計画が発表され、農業中心からICT産業へのシフトを明確に示しており、紙幣はその政策を反映させたものだ。すでに総延長5000km以上の光ファイバー基幹網を国内に敷いているとされ、地方でもネットが利用できる環境を整備しつつある。

コンピューターサイエンスで著名な米カーネギーメロン大学の分校もルワンダの首都キガリにあり、AI人材の育成も積極的だ。このような進展はルワンダだけではなく、他のアフリカ地域でも見られる。

アフリカ西岸のガーナの首都アクラでは、米グーグルがAIのラボを開設した。同国はオバマ前米大統領がアフリカ歴訪の最初の地として選び、アフリカにおいては治安も含めて先進的な国として知られている。インフラが整備されており、安定したネット環境がある上、ネットスピードはカリフォルニアと変わらないという。AI人材の供給源としてアフリカも入ってきており、今後中国に次ぐAI人材輩出地域になる可能性がある。

(スタディサプリ教育AI研究所所長/東京学芸大学准教授)