(注目の教育時事を読む)第63回 小学校高学年の教科担任制

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藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

中教審審議を待たずに教委や学校は英断を

◇難しい高学年の学級担任◆

本紙7月1日電子版で、「教科担任制と学級担任制 どちらがいい?」という読者投票が行われた。これは、中教審の「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」で小学校高学年における教科担任制導入に向けての議論が始まったことを受けてのもの。結果は、教科担任制75%、学級担任制20%と圧倒的に教科担任制の支持が高かった。

小学校高学年における教科担任制は、すでに多くの地域、学校で導入されているが、その方法には幅がある。中学校と同様に道徳・総合・学活以外の授業を各担当教員が担う東京都品川区の小中一貫校のような方法もあれば、一つか二つの教科で学級担任が他の教員と授業を入れ替わる鳥取県や兵庫県で行われている方法もある。

教科担任制の導入が望ましいか否かは、具体的な方法や、学校や教員の状況によって大きく異なるはずだ。それでも教科担任制を支持する声が多いのは、小学校高学年における学級担任の難しさを感じている人が多い表れと解される。

小学校高学年では、各教科の内容が高度化していくのに加え、学級経営や生徒指導に関する課題も複雑化するため、これまでも経験豊富で力量の高い教師でないと難しいという声がよく聞かれた。だが、若年層の教員の割合が増え、経験の浅い教員を高学年に多く配置する必要が生じている。

そして、昨年度からの道徳教科化、来年度からの英語教科化、プログラミング教育導入と、教員が新たに取り組む事柄が増えている。しかも、小学校3年生から6年生で週当たりの授業時間が1時間増えることとなっており、「働き方改革」とは逆行するような教員の負担増が進んでいる。

◆メリットが大きく、デメリットは考えられない◇

こうした状況を見れば、小学校高学年への教科担任制導入には、次のメリットが期待できる。

第一に、教員が自分の得意な教科を中心に担当できるため、教科の授業の質の向上につながると期待できる。

第二に、各学級の児童を複数の教員が継続して見るため、担任には見えにくい課題が見えやすくなったり、担任との相性が悪い児童が救われたりすることが期待できる。

第三に、中学校と類似の体制となるため、いわゆる中1ギャップの防止につながると考えられる。

第四に、同じ教員が複数学級で同じ内容の授業を担当するため、授業準備が効率化でき、教員の負担軽減につながると期待される。

さらには、教員の障害者雇用やワークシェアリングなどの新たな可能性につながることも期待できるだろう。

逆に、教科担任制のデメリットはあまり見つからない。担任が児童をよく見ることができなくなると懸念されるが、複数の教員が児童を見ることができるメリットの方が重視されるべきであろう。

また、柔軟な授業時間の変更ができなくなるという指摘もあるが、場当たり的な時間割変更でなく、計画的な調整が促されると前向きに理解されるべきであろう。

授業時間数の多い教科を担当する教員の負担が大きくなる可能性もある。ただ、教員免許に縛られる中学校とは異なり小学校教員免許では全教科教えられるので、一部の時間は別の教員が担当するといった調整はしやすいはずである。

◇導入を躊躇する理由はない◆

このように考えれば、来年度から負担が増える小学校で、高学年における教科担任制の導入を躊躇(ちゅうちょ)する理由はない。

ただし、小学校教員の週当たりの持ち時間数を変更せずに教科担任制を導入するわけにはいかない。

そもそも、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018で示されているように、日本の小学校教員の仕事時間は参加国中最長である。にもかかわらず、来年度からさらに教員の負担は増える。空き時間がほとんどないままで、各教員が複数の学級の指導に駆け回るような事態は、避けなければならない。

文科省もこの点については承知しているようで、本紙電子版8月26日が報じているように、教科担任制を導入する自治体について教育の加配に必要な人件費を支援する方針を固めたとのことである。

そもそも日本の教員の負担の大きさを考えれば以前から教員の定員増が必要だったのであり、来年度からのさらなる負担増は教員の定員増抜きになされるべきではなかった。

教科担任制導入と合わせて教員を増やすのは筋が違うようにも思われるが、今は名より実を取るべきであろう。

教科担任制については、これまで多くの地域で実施されており、成果や課題も豊富に示されている。中教審の審議にさほど時間をかける必要はないはずだ。中教審の審議を待たずとも、教育委員会や学校の判断で、教科担任制を導入するのは可能だ。

来年度からの負担増に合わせ、多くの地域、学校で、教科担任制の導入を含めた対応策が前倒しで実施されるくらいでよいだろう。教育長や校長の英断に期待したい。