必履習世界史教育の総括 国際化対応の役割を果たしてきたか

教育新聞論説委員 工藤 文三

地理歴史科の成立と世界史の必履習

改訂された高等学校地理歴史科は、2022年度から年次進行で実施され、新しい科目構成と履習方法でスタートする。30年間継続されてきた世界史の必履習は、廃止となる。各学校では、どのように科目構成と履習の改訂を受け止め、生徒に示し、授業をスタートすればよいのであろうか。

改訂前後の教育を連続性と不連続性の視点から考える必要もある。必履習世界史を最初に学んだ世代は30代になっている。必履習世界史の役割とその成果はどのように評価できるのだろうか。

地理歴史科は、1989年3月告示の学習指導要領改訂の際、社会科の再編成によって成立した教科である。89年改訂では、教育課程の基準の改善の方針の四つ目に「国際理解を深め、我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成」が掲げられた。この方針を踏まえ、結果として社会科が地理歴史科と公民科に再編成されることとなった。

世界史必履習は国際化対応の要請を受けた措置

当時、再編成の是非を巡り、新聞や雑誌で社会科における歴史教育の在り方や戦後社会科の役割を巡って研究者らによる意見が交わされた。

ただ、再編成の遠因は、78年の改訂にあるとみることもできる。この改訂では、「高等学校教育として共通的に必要とされる基礎的・基本的な内容を中心とし、中学年以降の選択科目の基礎となる」科目を低学年に必履習として設けることとされた。国語は国語Ⅰ、数学は数学Ⅰといった基礎的な科目が低学年に設けられ、社会科では「現代社会」が必履習とされた。

「現代社会」は、公民領域の内容が主であり、地理や歴史に関わる内容はほとんど含まれておらず、その後履修する地理や歴史との関連も薄かった。このような事情から、高等学校における地理教育や歴史教育の必要を主張する声が高まり、かつ国際化対応の要請と併せて、教科の再編成につながったとの解釈ができる。

一方、地理歴史科の履習方法は他の教科と異なっていた。「基礎」や「総合」「Ⅰ」などの基礎的な性格を持つ科目ではなく、地理、日本史と並列的な関係にある世界史を必履習とした点である。このことは、世界史と日本史のどちらを必履習とするかといった問題の原因となる。結果として、世界史の必履習は教科内の履習構造というよりも、国際化対応の要請を強く受けた措置であったと捉えられる。

06年には世界史の未履修問題が大々的に報じられた。これは教育課程の基準としての趣旨が、入試対応などの現実の中でゆがめられてしまった末に生じた問題であった。

必履習世界史教育をどう総括するか

国際化対応の役割を強く担っていた必履習世界史の教育をどのように総括していけばよいのであろうか。これまでの地理歴史教育と改訂地理歴史教育は継続されるもの、新しく要請されるものといった視点で、どのように整理し説明できるのか。

必履習世界史教育の成果については、まず世界史Aと世界史Bの目標に示されている諸能力がどのように習得・実現されてきたのかが問われよう。また、全国の高校生が学んだ必履習世界史の学習で、国際化に対応するための知識や素養、資質が育ったのかどうか、それらが国際社会に生きる日本人として有効に働いたのかという点も問われなければなるまい。

さらに、日本史と地理が選択履修であったために、世界史を共通に学ぶ以前にどのような課題があったのか、この点も合わせて議論する必要もある。

他の教科についても同様の課題があると考えられ、改訂された地理歴史科の実施を前に、未来を展望しながらもこれまでの教育実践を踏まえた議論が進むことを期待したい。