必要なのは「キャリア教育」ではなく「ライフ教育」

教育新聞特任解説委員 鈴木 崇弘

スウェーデン若者研究者の両角達平さんのブログ記事「年齢で生きづらさを抱える若者が多い日本」や、同氏のツイッターのスレッドを読む機会があった。

日本の若者はヨーロッパの同世代と比べて、いかに教育や仕事が年齢に応じて制約を受け、ワンパターン化していて、生きづらいかについて、説明していた。

一例として、日本では受験競争が過熱し、20歳代後半からはほとんどが学生でなくなるのに対して、フィンランドでは30歳代でも5人に1人が学生であることや、スウェーデンでは大学入学平均年齢が24歳であることをあげていた。

年齢による強い制約

日本では小中高と進み、多くはそのまま大学に進学し、学部のある時点から就活状態に入って4年間で卒業し、就職する者が多い。

近年はキャリア教育が小中高などでも実施されているが、多くは大学卒業時の就職をどうするかを目指して行われていると言えよう。

しかも、就職率やより優良な大企業に就職できるかどうかは、大学の入学志望者数にも大きな影響があるため、大学もどうしても、卒業時の就職に役立つキャリア教育を重視してしまう面がある。

日本のような終身雇用的色彩が強い、メンバーシップ雇用は、新卒の一括採用と結びついている。これは、新卒が中途採用と競争がないので、若い世代の失業率が低いことにも寄与している(注1)。

他方、近年は新入社員の3人に1人は3年以内に離職しているともいわれている。

これは新卒後のキャリアと、当該者の考えや生き方へのギャップがあるからだろう。本来は、キャリア教育がそのギャップを埋める役割を担うべきだが、そうなっていないからだと考えられる。

それは日本における教育やキャリアに年齢的な制約があったり、目先の視点からキャリア教育がなされたりしているからではないだろうか。

重要なのは「ライフ(人生)」

筆者は、PHP総研において、日本で働き方改革が大きく叫ばれる前に、働き方改革に関する研究をする機会があり、「新しい勤勉宣言」という報告書(注2)と提言を、他メンバーと発表した。

その中で、キャリアやワークはあくまで、ライフ(人生)の中で位置づけられるべきだと主張した(注3)。
キャリアやライフは、おのおの単独で考えるべきではなく、自分の志向・希望・長短所および結婚・家庭・育児・病気・介護・高齢化・家族環境などの、さまざまなライフイベントを考慮して、本来は選択されるべきだからだ。

必要なのは「ライフ教育」

つまり本来は、「キャリア教育」ではなく、「ライフ教育」の中で、キャリアを考えていく視点が重要なのだ。いつ学びあるいは学び直し、いつ仕事をするべきかなどは、年齢よりも、個々人の置かれた状況やニーズによって異なってくることになる。

人生100年時代では、その点がさらに重要になってきていると言えるだろう(注4)。

  • (注1)欧米では、新卒も中途採用などと競争することになり、若い世代の高失業率という問題も生んでいる。
  • (注2)PHP総研のHP参照。
  • (注3)それを「ワーク・イン・ライフ(Work in Life)」と呼ぶ。
  • (注4)筆者が大学で受け持つ「キャリア形成」の科目では、そのライフ教育の面を重視すると共に、学生にその視点をよりリアルに感じさせるために「人生ゲーム」なども活用している。

(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)