全国学力・学習状況調査の結果 危機を県全体で受け止める重要性

国立教育政策研究所総括研究官 千々布 敏弥

今年度の全国学力・学習状況調査の結果が7月末に公表された。今年度の調査からA問題、B問題を合体させたものになったが、以前よりメディアでも教育委員会でも算数・数学と国語の正答率を合体させて比較する手法が多くとられていたため、今回もまとめ方に大きな変容はないようだ。おおむね全国平均点から上位であるか、下位であるか。改善傾向にあるか否かという視点で報告されている。

沖縄県や高知県の小学校における正答率が過去に急上昇したことから、教育委員会の施策によって学力を上げることは可能との認識が広まった。13年度調査において、目当ての明示など秋田県が力を入れている指導法が学力との相関が高いという分析結果が出て、秋田県に倣った授業スタンダードを策定する教育委員会が増えた。

全国学力調査の都道府県別平均点は、年を追うごとに格差が小さくなる傾向にある。(国語や算数・数学の)勉強が好き、授業の内容はよく分かると回答する児童生徒の割合は増加傾向にある。この調査によって学力と相関する指導法が、秋田式指導法以外にも明らかになりつつあり、それを取り入れる学校が増えてきている故であろう。

すなわち、国語と算数・数学については全国的に指導が改善傾向にあると捉えてよい。そのような中で、平均が全国平均を下回っている、その傾向が年を追うごとに強まっている県がある。それらの県は、改善への意欲が欠けているのではと思わざるを得ない。

個別に関係者に話を聞くと、議会が追究しない、保護者が学力に関心がないなど、地域性の要因もあるようだ。教育委員会担当者の意識も少しのんびりしている。対して沖縄県、高知県の教育委員会担当者は、私がこのたび編纂(さん)した『学力がぐんぐんあがる急上昇県のひみつ』(教育開発研究所)で、「2007(平成19)年、沖縄県全土に衝撃が走った」「厳しい現実がそこにあった。2007(平成19)年、約50年ぶりの全国学力・学習状況調査は、低位に置かれ続けていた高知県の児童・生徒の力を如実に浮き彫りにした」と語っている。

何も都道府県ランキングにこだわるべきだ、と言っているのではない。授業改善の視点を学力調査から得ることができればよい。私が2年前に沖縄県で見た公立小学校の授業は研究校のそれと遜色ないものだった。かつては荒れて、生徒指導上の問題が多発し、学力も県下位にあった学校である。教育委員会がやる気を出して、学校がやる気を出せば授業を変えるのはさほど困難でない。子供の学力はその後に付いてくる。

秋田県が今日のトップクラスの成績を残すようになったのは、昭和30年代学力テストの成績の低さを県全体が重く受け止めたことに起因している。そのために秋田県がとったのは、横並び評価ではなく自己評価と自己改善を促進する施策であり、それぞれの学校が実践している授業改善の取り組みを促進する施策だった。

今年3月に秋田県総合教育センターが公開した「主体的・対話的で深い学びの実現を目指す授業づくり」研究の報告書は、アキタラクティブという言葉で、秋田県が目指す新しい授業像を提案している。5年前から取り組んできた共同研究の成果として、秋田式探究型授業を超えて各教師が授業改善に取り組むための視点をまとめたものである。秋田県のこの取り組みは、型の構築に満足することなく型を超えた授業改善を追究する姿勢を表している。

危機を県全体で受け止めることのできた県に対し、知事の指令で急きょ学力向上に取り組むようになった県の印象はよくない。相談を受けていると、目的が授業改善あるいは子供の変容でなく、知事への対応にあるのが透けて見えてくるからだ。全国で改善の事例が積み重なっていても、改善しにくい教育委員会や学校は多いようだ。