ルール・マナーの教育 指導は体験を通し積み重ねて

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

毎年の夏、全国各地で祭りや花火大会が開催され、場所によっては数十、百万という観光客が押し寄せる。何よりも地元の人々が楽しみにする伝統行事であり、地域の絆を深める祭りや大会である。加えて経済効果も期待されている。

一方で異変も起きている。こうした祭りや大会が中止に追い込まれているというのだ。その数はこの2年で、全国でおよそ50にのぼる(NHK『クローズアップ現代+』8月29日放送)。その理由は受容・収容規模を超える来場者の数であり、来場者のルール・マナーを守ろうとしない行動であるという。

主催地域の振興や観光客の集客のための広報・宣伝により、多くの人々が押し寄せる。盛大になる状況における主催者や警備担当者の悩みの種は、来場者のルールを守らない振る舞い、マナーの悪さだ。

安全確保のために入場を規制しても勝手に入ってしまう。誘導に従おうとしない。危険な場所から入ろうとする。路上に車を止めてしまう。信号を守らない。ごみやシートを散乱したままにする――など。

全ての人ではないにせよ、こういった一部の人の振る舞いが目立つことは確かであり、結果的に他の人々の安全を脅かし、楽しみを奪うことになる。安全確保のための警備費用もかさみ、祭りや大会、イベントの規模や在り方の見直しも進められている。改めて、ルールやマナーの重要性を見直す必要があるだろう。

ルールとは「規則・きまり」、マナーとは「その場に合ったふさわしい態度や動作」。これらは学校教育の中でも積み重ねている。

例えば「規則・きまり」について小学校では、低学年の特別活動・学級活動において「約束やきまりを守ることの大切さを理解して行動する」ことの指導を、全学年で「自分たちできまりを作って守る活動」の充実を求めている。

生活科では「規則正しく生活する」、体育では低・中学年で「きまり」、高学年で「約束」を守ることを指導する。道徳科では、「C 主として集団や社会との関わりに関すること」の項目(規則の尊重)で扱う。

低学年では「約束や決まりを守り」、中学年では「約束や社会のきまりの意義を理解し、それらを守る」、高学年では「法やきまりの意義を理解した上で進んでそれらを守り、自他の権利を大切にし、義務を果たす」必要について指導する。このようにルールやマナーの指導は小学校から積み上げている。

前述したルールを守らない、マナーの悪い行為や行動はどうして生じるのだろうか。

一つの原因として、頭では分かっていても体に染み付いていないということが言えるのではないか。すなわち体験的に学習していないからだ。規則・きまりを守らず、皆が勝手に行動するとどういうことが起きるか、実際の体験が必要なのだ。人が多いからわれ先になるのはある程度が仕方がないと済ましてはならない。学級の全員が一斉に出口に殺到すればどういうことが起きるかやってみればその危険性が理解できるだろう。

新1年時に廊下の歩行の仕方を実践しながら繰り返し指導したクラスの子は、その後、廊下を走らず並んで静かに教室に戻っていった。一方、教室内で口頭で指導しただけのクラスの子は始めこそ並んでいたが、すぐに走り出し、「走るなー」という担任の叫び声が1年中続いていた。口先の指導だけでは教育にはならない。

アクティブ・ラーニングが重視される今日、主体的な学び、体験的な学びを通して、ぜひ子供たちがルールやマナーを大切にして行動する力や態度をぜひ育ててもらいたい。