ポーズだけの働き方改革は要らない

教育新聞特任解説委員 妹尾 昌俊

働き方改革、掛け声だけか

この7月から9月に日本教職員組合(日教組)が実施した教員向け調査によると、依然として、学校(小中高)の長時間労働は深刻である。平均値なので目安にすぎないが、平日11時間近く勤務し、自宅でも50分近く持ち帰り仕事をこなし、休日も残業という実態が改めて明らかとなった(速報値)。おそらく多くの人が過労死ラインを超えるほどの水準である。

「『働き方改革』というフレーズだけはやたら聞くようになったが、やめた、減らしたものがないという現場の実感」

「出退勤の調査が始まったが、働き方改革に取り組んでいるフリ、ポーズをしているだけ」

こう話をする教職員は1人や2人ではない。

拙著『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)では、学校の働き方改革の5つの大まちがいを紹介している。紙幅の関係で3つだけお話しすると、

  • 校長がやっていることは「早く帰ろう」という呼び掛けくらい。
  • 「児童生徒のため」ならば多少遅くなっても仕方がないと、安易に例外を認める。
  • 多忙の要因、内訳を見ないまま、できる範囲のことをやみくもに進める。また、教職員の中や保護者などとの間でコンフリクト(対立)が起きそうなことには踏み込もうとしない。

あちこちの学校で、上記のようなマズイ事例が広がっているのではないだろうか?

国、教委、学校それぞれで

多感で多様な児童生徒と毎日過ごしているのが、学校という職場である。毎日が嵐のよう、しっちゃかめっちゃかなので、なかなか業務改善に取り組めないという事情もよく理解できる。

しかも、子供たちのためになることに囲まれていて、明らかにムダなことは、一部の事務手続きなどを除いて、それほどはないはずだ。

だが、「教員の意識改革を呼び掛けています」、「多少、会議を見直しました」といった程度の施策では、過労死ライン超えが多い現状を変えられるはずもない。

「学校だけが頑張ればよい」と言いたいのではない。国や教育委員会ができることも多い。文科省は、来年度予算の概算要求として、小学校の専科教員の増員などを盛り込んだ。資料に「教員の持ちコマ数軽減による教育の質の向上」とあるのは重要だ。一部の教科の交換・分担をしても、持ちコマ数が減らない状態では、勤務時間中にしっかり授業準備できない。

だが、まだまだ道は険しい。全国に2万校近く小学校があるが、増員要求は3000人程度なのだから、単純計算上は6校に1人も増員されない(しかも、今後の財務省との折衝で予算が削られる可能性だって大いにある)。

文科省には、予算の獲得などをもっと頑張ってほしいのは山々だが、学校も、受け身な姿勢、あるいは「国が悪い」と言うばかりではダメだと思う。「主体性や問題解決力のある子供を育てよう」などと言っているなら、教職員もそういう力を高めないといけないのではないか。

各校でできることを大胆に進めないと、新指導要領で教科書も変わり、教育の質を一層高めようとしている矢先、余計しんどくなるのは目に見えている。

では、どうするか

やるべきことは多岐にわたるが、先ほどの大まちがいの逆をいく発想が必要だ。つまり、

  • 「早く帰ろう」と言うだけではなく、「なぜ、早く帰るほうがよいのか」「なぜ、いまの長時間労働の日々ではマズイのか」という意味を一緒に考えていく。
  • 「児童生徒のため」になることの中からも、優先順位と劣後順位(優先度が落ちるもの)を検討して、選択していく。
  • 多忙の内訳を見て、時間を生み出す効果の大きなところなど、メスを入れるべきところに挑戦する。部活動の精選や行事準備の短縮化、採点・添削の効率化などが典型例。

まだ一部だが、そうした動きを進める事例も増えてきた。残業時間を減らすことだけが目的化してはいけないが、「育児や介護を抱えている職員も働きやすい職場になった」「先生が疲れをためるのではなく、子供たちに余裕をもって接するようになった」という声も聞く。

ポーズだけでなく、効果を実感できる改善を進めていこう。

(教育研究家、学校業務改善アドバイザー)

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