危機管理の徹底 想像・予知・予防を軸に

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

台風15号は関東地方、特に千葉県を直撃し、多大な被害をもたらした。電力や水道の復旧に予想をはるかに超えた時間を要している。病院に入院していた、重篤な患者の死亡も報じられた。空からの映像では、青いビニールシートに覆われた屋根の数々を映し出していた。さらにその後の雨で天井が水漏れし、悲嘆にくれている住民の姿も報じられていた。

学校も一週間休校になったところがあった。再開後、給食が提供できないため弁当持参となったが、断水のため困惑している保護者の声も聞こえた。国や地方の初期対応の遅れも指摘されている。

台風の直撃により、このような被害が出るのは予想されていなかったのであろうか。報道や映像を見る限り、これまでにない体験ではあるようだ。

今日、温暖化や気候変動による異常気象が世界各地で起きている。メキシコのカリフォルニア半島、フィリピン、インドネシア、タイ、太平洋の島々の国や地域で、ハリケーンやタイフーン、高波による甚大な被害が毎年報じられている。

同様の災害が海洋国家であるわが国に起きても不思議ではないし、予想できるのではないか。西日本での「平成30年7月豪雨」、今年の九州での豪雨水害など実際に起きている。今さらながら危機管理はどのようになっていたのであろうか。

「1:29:300の法則」は、管理職なら誰もが知っている「ハインリッヒの法則」だ。1つの死に至るような重大事故の背後には29の軽度の事故があり、その背景にはヒヤリとしたり、ハットしたりするような異常な状況が300ある――という経験則であり、危機管理の指針となっている。

各学校はこの300、すなわち日常的に生起している「ヒヤリ、ハット」や「アレッ、オヤッ」を感じる事案や状況から具体的に危機を想像しているだろうか、危機を予知しているだろうか、危機の予防に努めているだろうか。

今日の学校は新教育課程に向けた準備や、働き方改革=業務改善などへの取り組みで慌ただしく運営が行われていよう。

本来、10月、11月の学校は、4月からの指導の積み上げの下、教育活動が充実し、教育の質を高めるときである。子供の学びの姿、教師の指導の姿、教室など校内の教育環境、校庭などの施設設備の整備状況に、不備や瑕疵(かし)がなく、安全・安心な環境で教育活動や学校運営が展開されているはずである。

ただ、以下のような状況に気付いたり、発見したりすることはないだろうか。

▽週案の記録で授業時数が多すぎたり、少なすぎたりする教科などが見られる

▽教室内のゴミが目立つようになった

▽廊下を走る子供が増えた

▽休憩時刻前に子供が校庭に出てくる

▽休憩時間が終わっても教室に戻らない

▽保健室にけがの手当てに来る子供が増えている

▽昇降口の靴入れや傘入れの様子が乱れている

▽子供の奇声が増えた▽給食の残滓(ざんし)が目立つようになった

▽職員室・教室の教卓の上が雑然としている

▽始業時刻になっても教室に向かわない教員がいる

▽教員の顔に笑顔が見られなくなっている

▽挨拶や返事がない

▽給食の献立が物足りないものになった。

全て実際にあった実態や状況である。これらには必ず理由や背景がある。危機の芽である。

学校では「ヒヤリ、ハット」として事故だけでなく、「アレッ、オヤッ」と気になった事実から教育課程、安全、健康、予算・会計、情報、職務、服務などの危機を想像したり予知したりして、早々に予防策を講じなくてはならない。

危機を想像し、予知し、予防する――。これが新教育課程の円滑な実施、働き方改革=業務改善の基盤である。同時にこれは、管理職の日常の学校経営のそのものでもある。