(注目の教育時事を読む)第64回 災害と学校教育

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藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

寄付文化やボランティア文化の醸成を

◇台風による大きな被害にどう対応◆

本紙9月18日電子版でも報じられているように、台風15号による被害で千葉県を中心に大規模停電や断水などの甚大な被害が生じており、給食が提供できないために短縮日課で対応している学校が多い。

同記事によれば、萩生田文科相は千葉県教委に対して授業時数の補充や学校行事の実施について申し入れをすると話しているが、被災地では長期間にわたって厳しい状況が続いており、何よりも子供たちが安全・安心に生活できる状況をどのように取り戻すかが最優先課題となっている。

このたびの台風では、まず首都圏の交通まひと、鉄塔やゴルフ場の屋根などの分かりやすい被害が大きく報じられた。

総務省消防庁の発表によれば、9月19日現在で台風による死者は1人、負傷者は132人と、台風の規模に比して死傷者数は多いとは言えない。だが、数多くの倒木によって台風通過から10日以上経過しても千葉県で1万軒以上の停電が続き、家屋の屋根などの被害も深刻である。

停電については、当初は早期に復旧するかのように報じられていたため、見通しのまずさが指摘されている。残暑厳しい中で停電が続き、この影響と考えられる熱中症の死者が3人出たことが報じられている。

当初の報道の印象とは異なり、近年まれな長期間の停電や広範囲の家屋の被害が生じていることが明らかになりつつある。

◆被災地をどのように支援するか◇

では、私たちは今回の被害から教育に関してどのような示唆を得るべきであろうか。

もちろん、改めて被害の防止について考える必要はあるだろう。近年、台風などによる暴風雨が激化する傾向にあり、従来にも増して対応策が求められる。

また、私たちの生活が電気に大きく依存していることを前提に、長期間の停電による被害をどのように抑止できるかを考える必要がある。倒木が送電設備に深刻な被害を与えることを踏まえれば、森林の維持管理の在り方、ひいては林業の在り方についても考えなければならない。同種の被害を防ぐにはどうすればよいかを、今後の防災教育で扱うよう検討される必要がある。

他方、今回の被害は、災害で深刻な被害を受けた人たちを他の地域の人たちがどのように支援するかという問題を提起しているのではないか。

東日本大震災による原発事故や津波の被害をはじめ、地震や暴風雨、大雨、大雪などによる被害は近年繰り返されており、過去の被害を基に防災が進んでも、また別の深刻な被害の発生を止められているとは言い難い。大規模災害はこれからも起こり得るという前提で、被災した人たちをどのように支援するかが問われている。

このように考えたときに重要となるのは、寄付文化とボランティア文化の醸成である。深刻な被害が報じられると、何か協力したいと考える人は多い。支援の形はさまざまあるが、その基盤となるのは、復興のための予算の確保と、被災地で求められているボランティアの確保であるはずだ。

何をしてよいか分からない人はまず寄付をするべきであろうし、被災地で募集されている条件に合うのであればボランティアとして協力すべきである。

物品の支援や観光による応援も必要であるが、そうした応援はあくまでも被災地のニーズに応える形でなされなければむしろ迷惑になる。

◇社会貢献に有効かを判断する学習を◆

寄付文化やボランティア文化の醸成と言うと、思いやりや助け合いの心情を育むことが大切だと考える人が多いかもしれない。

もちろん心情は必要だが、それだけでなく適切なマッチングを可能にさせる仕組みについての理解が不可欠である。

被災地のニーズは多岐にわたる上、時間の経過とともに変化する。寄付された資金や物品が適切に使われない可能性もある。貢献の意思があってもうまく生かされないこともある。寄付文化やボランティア文化の醸成には、寄付やボランティアの在り方についての多くの人々の理解と、情報活用などの関連する能力の育成が必要だ。

日本ではなかなか寄付文化やボランティア文化が根付かないと言われるものの、クラウドファンディングが知られるようになり、NPOなどの活動も盛んになっている。
さまざまな寄付窓口やボランティア募集窓口を比較し、どこに働き掛けることが被災地支援や社会貢献に有効かを判断する学習があるとよいだろう。

また、被災者の立場を想定して、どのような形で求めると、有効に支援が得られるのかを検討する学習も、なされてほしい。

今回の災害を受け、被災地の自治体ではふるさと納税による寄付を呼び掛けている。

他の地区に住んでいる人にとっては、確実に被災地の自治体が使える形で送金できる上に、その分の税額控除が得られるため、負担が少ない。豪華すぎる返礼品が問題となってきたふるさと納税制度は、本来このように活用されるべきではないかと思わされる。

このたびの被害が、寄付やボランティアについて子供たちがあらためて学ぶ機会につながるよう願う。