神戸の教員いじめ問題 問われるガバナンス

教育新聞特任解説委員 妹尾 昌俊

「あれは、まれなケースだ」で片付けるな

神戸市須磨区の小学校で、教員による教員への大変痛ましい「事件」が起きたことは、周知のとおりだ。「非常に驚いた」「あきれて物も言えない」という感想をもたれている教育関係者がほとんどだろう。

本件のようなひどい事例はまさに前代未聞で、非常にまれなのかもしれない。だが、校長や先輩・同僚によるハラスメント、いじめを受けたという教職員の声は、かなり多い。

実際、全国で毎年5000人の教員が精神疾患で病気休職になっているが、このうち、ハラスメントなどが背景にあるものも含まれると推測される。もちろん児童生徒や保護者とのトラブルが原因も多いのだろうが。

まずは、学校という教育現場でのハラスメントなどの現実、実態がどのくらいあるのか、具体的にどのような事案なのか。事実の把握が必要だと思う。文科省「公立学校教職員の人事行政状況調査」では、休職となった背景、要因についてのデータはないのだが、すぐにでも改善していくべきだ。

被害に遭った教諭の救済、サポート、また児童へのケアが最重要であることは言うまでもない。ほか、今回の事件から気になったこと、学校や教育行政に考えてほしいことを3点に整理する。

救済する仕組みは機能しているか

第一に、教職員のSOSをキャッチしやすい仕組みがあるかどうか。子供へのいじめ調査はたくさんあるが、教職員のいじめ調査はほとんどなされていないのではないだろうか。

一試案だが、職場のストレスチェック調査を行っている学校も多い。そこと重ねて、定期的にハラスメントなどの事案がないか、把握できる仕組みを設けておくとよいかもしれない。

また、調査がなくても、介入、救済に向けて、相談先があるかどうかも問われるところだ。内部通報制度や人事委員会、相談電話窓口など、一応の制度、機関はあっても、利用しづらいとか、スタッフが少なくて対応が十分になされないといった問題はないだろうか。

第二に、ハラスメントなどの防止と解決に、校長ら管理職が機能しない場合にどうするか、という問題である。神戸の事案では、被害者は前任の校長には相談していたし、現校長は昨年までは教頭として赴任していた。詳細な検証は今後の事態解明を待ちたいが、管理職が事態を傍観、放置、助長した可能性もある。

また、本件以外について言えば、前述したとおり、校長などからのハラスメントを訴える声は事欠かない。

1点目とも重なる問題であるが、管理職が機能しないときの救済措置が脆弱(ぜいじゃく)ではないだろうか。

教育委員会が介入するということが通常であろうが、教育委員会も事態を甘く見て、深く関わらないケースもあるのかもしれない。このあたりも含めて、神戸の件をよそ事とせず、教育委員会などは反省点と課題を洗い出してほしい。

小学校教員は全然ヒマではないのだが

第三に、社会の学校に対する信頼感の低下だ。神戸のことは、まさに信頼失墜行為でもある。

わたしが危惧するのは、センセーショナルな報道などとも相まって、「小学校の先生ってあそこまで幼稚なの? うちの学校の先生も大丈夫?」あるいは「なんだ、先生たちってヒマなの?」というイメージが世間に広まることだ。

一度悪いイメージをもたれてしまったら、払拭(ふっしょく)するのは簡単ではない。地道な努力しかないだろうが、想定しておく問題のひとつかと思う。

子供たちの健全な成長を支え、子供たちの人生にも大きな影響のある学校現場で、大人同士のハラスメントやいじめ、傷害事件が起きては、子供たちに顔向けできない。

だが、校長や教職員向けに「注意喚起しました」「研修をしました」という程度では、楽観的過ぎる。全国の学校、教育委員会等が当事者意識をもって、今回のことから、自分たちの職場を見つめ直してほしい。

(教育研究家、学校業務改善アドバイザー)

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