(新しい潮流にチャレンジ)2019年度全国学力・学習状況調査を読む

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

学校はどう変わりつつあるか

新たな教育課程編成への学校の努力

2020年度は小学校が新教育課程の完全実施となる。その意味でも19年度の全国学力・学習状況調査は新教育課程実施へのスムーズな移行になるか、興味深い。特に新教育課程が求める新たな教育実現への期待がふくらむからである。

その期待の一つに学校の教育課程編成がある。例えば、カリキュラム・マネジメントで提唱されているのは、「学校の教育課程を踏まえた教科横断的な視点」である。中教審の『答申』以来、学校の対応はどうであるか、が課題とされて関連する調査が16年度から実施されているが、昨年度から変化の徴候がみられることに留意したい。

学校質問事項は「指導計画の作成に当たっては、各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していますか」である。

「よくしている」は、16年度小学校が19.6%、中学校16.3%であった。それが小学校は昨年度33.1%、今年度34.7%である。中学校は各28.0%、29.5%である。新たな教育課程編成に各学校が意識的に取り組み始めたという印象である。

他の質問事項にも前年度からの変化の徴候が見られる。

「教育課程表(全体計画や年間指導計画等)について、各教科等の教育目標や内容の相互関連が分かるように作成していますか」は、「よくしている」が小学校(16年度24.6%→今年度37.2%)中学校(21.1%→31.4%)である(以下同じ)。

「児童生徒の姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立していますか」は小学校(26.2%→37.2%)、中学校(22.9%→33.4%)である。

「指導計画の作成に当たっては、教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源を含めて活用しながら効果的に組み合わせていますか」は小学校(31.6%→46.9%)、中学校(16.3%→29.0%)であった。

実のところ、このような変化の大きさは他の質問事項ではほとんど見られない。各学校が新たな教育課程編成に意欲的になっている状況が読み取れるといってよい。

ただ、今年の段階で「よくしている」は3~4割程度であって、そのことから実施状況が高いと判断できるかどうかである。教育課程編成は日常の授業実践に結び付くのでなければ、実効性が伴っているとは言えない。ところが、肝心のアクティブ・ラーニングはやや低迷している感じである。

子供の主体的な学びは育っているか

新教育課程の実施で注目されるのは、日常の授業の取り組みである。アクティブ・ラーニングが提唱され、「主体的・対話的で深い学び」が課題とされているが、これらとの関連で授業などの取り組みはどうだったか。

例えば、学校質問事項として「調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」は16年度からの実施である。ところが、「よく行った」を見ると、小学校(16年度21.9%→今年度22.5%)とほとんど変わらない。中学校も同様で(20.4%→21.2%)である。

17年度から実施している質問事項「調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、各教科等で身に付けたことを、様々な課題の解決に生かすことができるような機会を設けましたか」は小学校(17年度16.3%→今年度18.3%)、中学校(12.3%→14.8%)であった。

実は2つの調査とも18年度はわずかに伸びたのであるが、今年度は低くなっている。新教育課程に向けて新たな質問事項を設定したのであるが、結果は芳しくない。両者ともに2割前後で低調である。

一方、子供の学習状況はどうか。子供質問事項では「5年生まで(1・2年生のとき)に受けた授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいたと思いますか」は、「当てはまる」が小学校(昨年度29.2%→今年度33.1%)、中学校(26.4%→29.4%)である。子供はより積極的ではないか。

実のところ、子供の変化が大きく表れている質問事項がある。「国語の授業では、目的に応じて、自分の考えを話したり書いたりしていますか」だ。「当てはまる」が小学校(09年度15.6%→昨年度26.2%→今年度36.4%)、中学校(9.6%→19.4%→32.5%)であった。今年度大きく伸びている。

今年度の新規項目として「国語の授業で学習したことを、普段の生活の中で、話したり聞いたり書いたり読んだりするときに活用しようとしていますか」は、「当てはまる」が小学校37.3%、中学校31.1%であった。

重要なのは、アクティブ・ラーニングとしての子供の能動的な学習態度の形成である。それが高まっていることは、新学習指導要領への移行に期待が持てるのである。

今回の学校調査では、昨年度よりも学校の指導計画がカリキュラム・マネジメントとしてより積極的に行われ始めているが、半面、「主体的・対話的で深い学び」に関する事項はさほど変わっていないという結果であった。ところが子供への調査では、国語など積極的な学習態度が示されているのである。

教師側の課題として、最も重要と考えられる単元展開などの授業実践におけるカリキュラム・マネジメントをより効果的に展開する状況をつくり上げる必要があると考える。

ICTの実施状況はどうか

今年度の調査は、国語、算数・数学がA問題・B問題別を解消し、また中学校英語を実施したが、その調査分析の結果はそれぞれの教科専門家に委ねたい。

他の新しい調査として留意したいのは、今後極めて重視されるICTである。質問紙調査に次の新規項目が見られる。

「5年生まで(1・2年生のとき)に受けた授業で、コンピュータなどのICTをどの程度使用しましたか」は「ほぼ毎日」小10.4%、中7.2%、「週1回以上」小20.3%、中24.2%、「月1回以上」小38.4%、中32.8%、「月1回未満」小30.8%、中35.7%であった。この調査結果を見ると、小・中学校の実施状況がほとんど変わらないのである。ただ、使用状況は「ほぼ毎日」と「月1回以下」など学校格差が明瞭である。

一方、子供はどうか。「授業でもっとコンピュータなどのICTを活用したいと思いますか」では「当てはまる」小60.8%、中48.1%。「どちらかと言えば当てはまる」小25.7%、中30.3%。小学校は合わせると80%を超え、中学校よりも多い。デジタル人間が低年齢化しているのではないか。つまり、学校の実施状況に比べてICT活用への子供の欲求はこのように高いのである。

ICT教育は新学習指導要領の重要な課題である。しかし、OECDのTALIS2018の調査をみてもわが国の実施状況は極めて低い。ICT教育を求める声は子供の側からも極めて強いことを、教育行政や学校・教師は切実に受け止めるべきである。