EdTech 産業界も本格的に議論

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

EdTechという言葉を聞くようになって久しい。今では日本にある高校の約半数で使われている「スタディサプリ」が世に出てきたのが2011年。私がウェブメディアでEdTechの連載を始めたのが14年。その頃はまだごく一部の地域や学校がEdTechに取り組んでいた。しかしこの直近5年でもさまざまな動きがあり、政府としても文科省、経産省、総務省が積極的に取り組んでいる。今回は、そうした動きの中で、新たに経団連の動きについて情報を共有したい。

EdTech戦略検討会

今年8月、経団連イノベーション委員会の下に「EdTech戦略検討会」が発足した。私はその座長を拝命することになった。

経団連では「Society5.0」の実現を最重要課題と捉えて、さまざまな取り組みを進めている。これまで、ヘルスケア、農業、物流といった分野についてSociety5.0時代に向けた変革の方向性を描き、その未来像を基に関係者との対話などを進めてきた。

Education(教育)に Technology(テクノロジー)を導入し、イノベーションを起こす「EdTech(エドテック)」も重要分野の1つ。同検討会を設置することで、デジタルトランスフォーメーションで実現する、Society5.0時代、人生100年時代にふさわしい教育の姿を検討する。

同検討会の視点は主に3つある。(1)Society5.0を支える「STEAM」人材の育成(2)SDGsにかなう「誰もが、いつでも、どこでも」学べる教育の実現(3)個々人の適性や学修スタイルに合わせた教育の「個別化」。

毎月、関係省庁や学校、企業、スタートアップなどを来賓として迎え、EdTechの現状についてヒアリングさせていただく。最終的には、年度内に提言「EdTech戦略(仮)」を取りまとめる予定だ。

発足当初SNSで同会が開催された旨投稿したところ、本当に多くの反応があった。主なコメントは「ついに経団連が動き出したのか」ということ。各省庁に所属している方からも個別に連絡を頂き、一様に驚きを隠せない一方で、「一緒に動きたい」「期待したい」との声がけを頂いた。

今回は、これまで同検討会に来賓として参加いただいた文科省についても、その要旨をシェアしたい。

文科省の最新動向

新学習指導要領の情報教育・ICT活用教育は、小学校は2020年度全面実施、中学校は2021年度全面実施、高校は2022年度から年次進行で実施予定だ。小・中・高校共通のポイントとして2点ある。

(1)情報活用能力を、言語能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け

(2)学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実を明記したことだ。

ただ現状は厳しい。今年度の全国学力・学習状況調査の結果(ICTを活用した学習状況)を見てみると、児童生徒に対して「授業でもっとコンピューターなどのICTを活用したいと思うか」「授業でコンピューターなどのICTをどの程度使用したか」と調査したところ、授業でもっと活用したいと思う児童生徒は約8割に及ぶものの、実際の授業での使用頻度は「ほぼ毎日」と答えた児童生徒が1割以下という結果となっている。

つまり、児童生徒のコンピューターなどのICT活用への関心が非常に高いことが浮かび上がった一方で、学校のICT環境整備が十分に進んでいない状況だ。OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)「ICT活用調査」の「学校での使用頻度」を見ても、日本は「まったくかほとんどない」が約9割を占めている。PISA2015において日本の読解力が前回に比べて落ちている。

国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント」によれば、コンピューター使用型調査への移行の影響などが考えられるとのこと。他国ではデバイスを使った学習が一般化する一方で、日本のそれの遅れが国際的な学習到達度調査の結果に影響を及ぼしていることになる。

EdTechを推進する上で学校のICT環境の整備については、今年3月1日現在で教育用コンピューター1台あたりの児童生徒数は5.4人。昨年同期と比べ、わずかながら改善している。しかし1人1台には程遠い数字だ。都道府県別では整備に大きな格差が生じており、地域によって学習に用いるツールが異なる現状となっている。

文科省は地方財政措置を行い環境整備に取り組んでいるが、BYOD(Bring Your Own Device)を本格的に実施する必要性を感じる。

(スタディサプリ教育AI研究所所長/東京学芸大学准教授)

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