資質・能力重視の教育の流れ 今後、どう検証し、評価するのか

教育新聞論説委員 工藤 文三

教育の流れと学習指導上の課題

2000年代に入ってOECDのDeSeCoプロジェクトによるキー・コンピテンシーの提案や「社会人基礎力」(2006年、経済産業省)、キャリア発達に関わる基礎的・汎用的能力(11年、国立教育政策研究所)、また、全国学力・学習状況調査のB問題に見られるように、能力達成型の教育の流れがわが国でも具体化されるようになった。20年度から開始される大学入学共通テストにおいても、思考力などを重視する取り組みが強化されている。17・18年の学習指導要領の改訂も、このような能力の育成を重視した流れと軌を一にした改革といえる。

学習指導要領は、総則に学力の三つの柱を示すと同時に、内容を能力別に区分する形式をとった。このため、能力別に示された内容は「内容」なのか、それとも目指す「能力」なのかが分かりにくくなっている。

仮に能力を示しているとすれば、扱うべき内容はどのようにすれば導かれるのかが課題になる。例えば学習指導要領の項目を仮に単元とみなした場合、能力別に示された内容は、目標なのか内容なのかという点である。

これは、学習評価の在り方にも関連する。

指導要録の改訂に伴って、観点別評価の観点を三つとすることが明確にされたが、学習指導要領で内容を能力別に示したことと、観点別評価との関係も実践的な課題になると考える。

これまでは、指導事項に即して評価規準を設定し、観点別評価を実施してきたが、今後は能力別に示した内容が、そのまま評価規準としての意味を持ってくる可能性があるからである。

さらに、思考力・判断力・表現力等の習得を目指す授業をどのように進め、どのような方法で評価するかといった課題がある。

仮説をどのように検証するのか

以上、見てきたように、2000年代以降わが国の教育は、学習指導においても入試などの学校間接続においても、能力を重視した姿へと転換しようとしている。

この改革がどのように児童生徒の学力につながっていくのか、また、教育実践上、どのような成果と課題があるのか。

学習指導要領は来年度以降小学校から順次完全実施に移る。改革の検証は、教育実践の中で順次進めていく必要がある。検証に当たってのポイントは、次の点にあると考える。

第一に、各学校の教育課程の編成にどのような変化がみられるかという点である。今次改訂で示された学力の三つの柱が、各学校の教育課程編成にどのように反映されるかの把握が必要である。

第二に、各教科等の年間指導計画の要素や構成にどのような変化がみられるかという点である。指導の順序の示し方に変化はないと考えられるが、各単元のねらいや学習活動、評価の示し方に工夫がなされると予想できる。

第三に、授業構成の在り方の変化である。特に、思考力・判断力・表現力等の習得を図るために、例えば問題解決的な授業構成や多様な学習活動の工夫が想定できる。また、主体的・対話的で深い学びにつながる具体的な授業構成がどのようになされるかも重要といえる。

第四は、学習評価の取り組みの変化である。とりわけ、思考力・判断力・表現力の評価方法と妥当性・信頼性を高めるための方策の把握である。

最後に、教科書を含めた教材や指導方法の参考になる諸資料についても分析が考えられる。

今次の改訂は、コンピテンシー重視の大きな流れを前提にした教育仮説であり、この仮説は、各学校の教育実践を通じて、子供にどのような力として結実していくのかといった点から、検証を進める必要がある。

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