ラクビー・ワールドカップ 感動を教育の力でつなげよう

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

44日間にわたって開催されたラクビー・ワールドカップ。初の日本大会は国民に多くの感動や驚き、多様な国際交流の機会を与えた。にわかラクビーファンが誕生し、人気も高まった。子供のラグビースクールは一気に参加者が増えた。

日本代表チーム「ブレイブ・ブロッサムズ」(BRAVE BLOSSOMS)の活躍、その陰に血のにじむような努力・練習があったこと、外国チームが放つ強さや誇り、語り継がれるだろうプレーの数々、さまざまな名言、さらには選手たちの会場外での行動など、数多くの財産を残してくれた。

これらの感動やよさを是非今後の子供たちへの教育に生かし、つなげていきたいものである。

生かし方としては、校長講話、国語、社会科、保健・体育、道徳科、特別活動や外国語活動・外国語などの教材としたり、活動に取り入れたりすることが考えられる。

例えば日本代表のスローガン「ワンチーム」。「チーム全員が一つになって戦う」という意味だ。彼らはあらゆることに、ぎりぎりのところまで取り組み努力を積み重ねた。選手やコーチだけではない、スタッフ全員が一つになるためにそれぞれの立場で努力と創意工夫、研究を重ねた。

体力で上回る外国チームに勝つには猛練習で体と精神力を鍛えるしかない。科学的な研究を取り入れ、1センチ単位の精密で強力なスクラムをつくり出した。研究して生み出したダブルタックルやオフロードパスを身に付けるまで繰り返し練習した。心身が最後まで持ちこたえるよう、レジリエンス(復活力)を鍛えた。

外国にルーツを持つ選手も多いので国歌「君が代」の意味を確認したり、さざれ石を見学したりもした。そして、試合に出ない選手が「カントリー・ロード」の替え歌「ビクトリー・ロード」を考案し、全員で輪になって合唱していた。

まさに一つになるべく最善を尽くした4年間であった。見事に初のベスト8入りを果たした。

ジョセフヘッドコーチの言葉、「自分たちのプレーを信じること、諦めないこと」通り。だからこそ結果が後から付いてきた。

このように講話や教材、活動の素材はたくさんある。ぜひ活用してほしい。

もう一つは、国際交流の機会。ホストタウンとなった町では、選手を招いたり、選手の方から出向いたりして交流した。

ラグビーを一緒にプレーしたり、文化交流をしたり、給食など食事を一緒にしたりと、共に楽しんでいる姿が各地で見られた。外国の人々とのこうした交流の経験を一回限りで終わらせず、ぜひつなげていけるようにしたい。

特に、国歌については、ただ失礼のないように聞いているだけではなく、その意味や歌の背景を学び、斉唱の際に一緒に歌っている姿に、交流が身に付いていることを実感した。こうした足元からの交流を大切にしていきたい。

ラクビーの次は東京オリンピック・パラリンピックである。オリ・パラ教育の視点として「学ぶ、観る、する、支える」がある。

今回のラグビーではそれが見事に実践・実現できていたように思う。オリ・パラには世界中の国や地域から選手、応援や観光の人々がやってくる。

今回のラクビーのような熱い戦い、応援を期待し、多くの外国の人々を迎えて国際交流を盛んにし、日本の文化や伝統を知ってもらう機会にしたい。

ワールドカップを終えてワールドラグビーのビル・ボーモント会長は大会を総括する記者会見で「最も偉大なW杯として記憶に残ると思う。日本は開催国として最高であった」と評価したという。この流れを東京オリンピック・パラリンピックに教育の力で着実につなげていきたい、ワンチームとなって。

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