わが国の不登校対策 子供に自己肯定感や自己有用感を育む

教育新聞論説委員 細谷 美明

文科省は10月25日、「不登校児童生徒への支援の在り方について」とする通知を、各都道府県教育委員会などに出した。

これは2016年9月14日付けの同名の通知文を改訂したものだが、これまでの国の不登校対策に対し大きな方向転換を示したものと言える。

通知文は、16年12月に公布された教育機会確保法とこれまでの不登校対策との齟齬(そご)を修正したもので、①不登校対策の基本理念を「学校復帰」から「社会的自立」にしたことの再確認②フリースクールなどの民間施設での受け入れおよびそこでの学習評価と指導要録への記載、学校から児童生徒や保護者、民間施設への情報提供の促進③十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した者は夜間中学での学び直しが可能であることの再確認④引きこもり児童生徒がICTなどを活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出席扱いの認定――などが大きな特徴である。

学校外の学習により義務教育学校修了を認め、より学習保障の機会を広げたことは、不登校で悩む子供と保護者にとって朗報と言える。卒業認定など教育指導の責任者である校長は、今回の通知および別添の各資料に十分目を通し、不登校に関する認識を改めるだけでなく自校の教職員にもその趣旨を周知徹底すること、保護者や各関係機関との連携を怠らないことが肝要である。

同時に課題もある。地域格差である。一つは、③の中学校卒業者の学び直しの受け入れ先として夜間中学が指定されているが、現在わが国の公立夜間中学の数は33、大部分は大都市圏内(東京都8、大阪府11など)に集中している。

今後、新たに設置しようとしている自治体も増えているようだが、教職員の任用増加につながる問題でもあり財政面と人事面の課題をいかに解決するか。また、現在の夜間中学の現状は、日本国籍を有しない外国人が在籍生徒数の8割を超えており(17年7月、文科省調査)、日本語指導という特別のカリキュラムを組んでいるところが多い。そういった環境の中で、日本語の習得を目的とした生徒との共生が成立するかといった課題も抱えている。

もう一つは、④のICTなどを活用した学習指導について、遠隔教育システムの導入などのハード面や指導する人材の確保といったソフト面の課題も、財政状況の違う自治体の格差が浮き彫りとなる。また指導については、教員免許状の保有者など適切な人材の確保のほか、当該校の教員への負担も「教員の働き方改革」の観点から配慮しなければならない。

国が不登校対策にここまで変革のメスを入れたのには、増え続ける若年無業者や引きこもり中高年の存在が大きい。

これについてはすでに本紙の8月26日付号でも触れたが、17年の25~39歳の無業者人口は約50万人(総務省統計局調査)、同年の40~64歳の引きこもり中高年の数は約61万3千人(厚労省調査)である。理由はさまざまだが、実に百十一万人あまりの大人が働いていない状態である。これは同年齢層の総人口の約1.8%に当たる数字である。

不登校と若年無業者、引きこもり中高年の相関は不明だが、就学年齢層の学業放棄は今後の国の経済の活性化を停滞させることにつながる。そういった意味で学校教育関係者にかかる責任も重い。

不登校の原因がさまざま考えられるように、その解決には多くの困難が伴う。

しかし、学校教育段階で多くの大人が子供に関わり自己肯定感や自己有用感を彼らに育むことで、不登校の原因要素は一つ一つ取り除けることを「社会に開かれた教育課程」の実施に当たり、管理職は強く認識すべきである。