アフリカの教育の現状 ルワンダのEdTech

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

10月14日から約1週間、ルワンダとケニアを訪問した。アフリカ地域の発展は昨今よくメディアでも取り上げられることが多いが、その観点は特にテクノロジーの進展との関係が多い。ガーナの首都アクラにはグーグルがアフリカで初めてAI研究所を設立し、ルワンダの首都キガリにはコンピューターサイエンスで有名な米カーネギーメロン大学もアフリカ校として開学している。

アフリカ地域の人口は2050年には25億人、2100年には45億人に到達すると言われている。その人口規模を考えると、今後の経済の中心地がアジアとともにアフリカにも移ることは容易に想像できる。今回は私自身が実際に見てきたルワンダの現状について共有できればと思う。

ルワンダの政策

本紙電子版8月28日付でも、ルワンダが「アフリカのシンガポール」を目指していると述べた。120万人、人口の約1割が虐殺された1994年の事件を経て、今年は25年。年平均経済成長率は7%で、2000年にICT立国を目指した2020年計画が発表され、農業中心からICT産業へのシフトを明確にしている。

国内のインターネット網は国土の95%をカバーしており、地方でもネットが利用できる環境を整備しつつある。国が政策としてICT化を推進していることは強力で、米シリコンバレー発ドローンのスタートアップ「ジップライン」は、ルワンダ国内のどの病院でも30分以内に血液を届けられるようにした。

日本企業も進出している。トヨタは、ドローンを活用した高付加価値農作物輸出促進のための普及・実証・ビジネス化事業、楽天はブロックチェーン技術とAI診断・モバイル診療サービスを活用した、マイクロ保険事業の案件化調査をしている。また、㈱さくらは小学校向けに算数のアプリの実証事業をしており、政府からの評価が高い。

このように、25年前に大虐殺があった場所とは思えないほど、変化している。ただ、実際に私が訪れて感じたのは、まだまだICT化の途上であるということだった。

ホテルのWi-Fiのスピードは想像より遅く、住所が明確でないためAmazonなどのECも無く、パソコンなどのデバイスを所有している人が少ない。また農業も、コーヒーや茶など大規模農園は流通などにテクノロジーを用いているようだが、大部分の農家にはまだまだテクノロジーが普及していない印象だ。

教育の現況

経済成長が著しい一方で、94年の大虐殺で教育システムが破壊された後遺症は、まだ存在する。

各国の人的資本力を示す世界銀行の人的資本指標は157国中142位。小学校の総就学率は2018年で137.5%(留年者がいるため100%を超過する)だが、中学校のそれは39.6%と急減する。ルワンダでは「青空教室」と呼ばれる外での教育は行われていないものの、教育の質は依然として低い。

さまざまな事情があるが、例えば言語も大きな課題だ。同国では08年に教育で用いる言語をフランス語から英語に変更した。教師たちは今までフランス語で教えていたが、ある日を境に自分たちが習ってこなかった英語で授業することを強いられた。そのため、十分な教育ができていないとの指摘がある。

また、教員の給与も低く、小学校の教師で月収約5000円、中学校で約1万円となっており、決して良い給与ではない。そのため教師の質も問われている。同国では2024年までにパソコン1人1台を目指しているが、配布されたとしても使い方が分からない教師が特に地方には多いため、授業で活用されていないといった状況もある。

米有名大学がキガリへ

高等教育に目を向けてみると、2011年に首都キガリに、米有名大学であるカーネギーメロン大学の拠点が設置された。

アフリカで唯一の米大学の拠点で、大学院の理学系2専攻で学生総数は129人。91人が男性で、38人が女性。65人がルワンダ国籍を持ち、その他はアフリカの15カ国から来ている。学費は本国と同じだが、ルワンダ国民向けの奨学金などを使えば年8000ドル(約80万円)まで下がる。

米本国の大学と同じ学位証を取得できると考えればかなり割安だが、それでもルワンダ国民にとってはかなり高額で、入学試験に合格しても経済的に入学できない人も多い。授業は専門的な内容のほか、英語が不得意な学生も多いため、英語そのものの授業やプレゼン方法などのソフトスキルも学ぶ。

今後同国は、この大学を高等教育の拠点として、同国の理系人材の育成だけではなく、アフリカ全体でリーダーシップを持った理系人材の供給源となることを目指している。

(スタディサプリ教育AI研究所所長/東京学芸大学准教授)