【深掘り 教育ニュース】来年度の全国学力テストの実施要項

学力と家庭の経済状況の関係を明らかにするか

文科省は11月22日、2020年度の全国学力・学習状況調査の実施要項(全国学力テスト)を学力調査に関する専門家会議に示した(本紙電子版11月22日付既報)。そのポイントは何か。

「経年変化分析調査」と「保護者調査」を一体的に

一見何でもないようなニュースだ。知識を問うA問題と活用力を問うB問題が一体化された2019年度のような大きな変更はない。3年に1回の理科と中学校英語の学力テストも20年度はない。実際、20年度全国学力テストは「4月16日」の実施という以外に学校現場にとって関心を呼ぶ内容はないとも思われる。

ただ、少しだけ学校現場にも関心を持ってもらいたいのが、「経年変化分析調査」と「保護者調査」という二つの補助調査が20年度から一体的に行われることになるという内容だ。専門家会議の中には、これを今後の教育行政にとって「画期的な出来事」と高く評価する声もある。

全国学力テストは、ほぼ全ての学校を対象とする悉皆調査として、国語と算数・数学の学力テストと、学校(校長)と児童生徒への質問紙調査を毎年行っている。

また、それらとは別に二つの補助調査も併せて実施されている。それが「経年変化分析調査」と「保護者調査」だ。

全国学力テストの出題と解答は公開されるため、毎年同じ問題が使えない。事前に平均正答率が調整されているとはいえ、これでは学力の変化を正確に把握するのは難しく、学力調査としての全国学力テストの欠点の一つとなっている。

それを補うために創設されたのが「経年変化分析調査」だ。同調査のテスト問題は原則非公開。同じ問題を繰り返し使用することで、子どもの学力がどう変化したかが正確に把握する。悉皆調査ではなく一部学校のみの抽出調査だが、統計学的にはそれで十分といわれ、これまで13年度と16年度の2回実施されている。

学力変化への影響の分析を可能に

一方の「保護者調査」も抽出調査で、回答を同意した保護者に職業、学歴、所得などの「社会的経済的背景」(SES)を聞くことで、家庭の経済的・文化的状況などを調べる。こちらも13年度と17年度の2回実施されている。

特に、最初の13年度調査の分析によって、家庭の経済状況が豊かな子供は、そうでない家庭の子供よりも学力(全国学力テストの成績)が高いということが、初めて明らかになった。学校関係者なら誰でも経験的に知っていた事実だが、それが科学的に立証されたことによって、その後の経済格差と教育格差をめぐる議論に大きな影響を与えた。

ただ、これまで二つの補助調査は、同じ学校を対象にしておらず、別々に実施されていた。それが20年度から「保護者調査」は、「経年変化分析調査」を行った学校の保護者を対象に実施されることになり、実質的に一体化される。

これによって、同じ出題によるテストを繰り返すことで、学力の変化の正確な把握と、その学力変化に家庭のSESがどう影響しているのかを分析することが可能になる。

学力格差の拡大防止策にもつながる

今後、データを積み重ねていけば、家庭の経済力が子供の学力にどう影響を及ぼしているかだけでなく、学力格差の拡大を防止するために、少人数学級などがどれだけ有効かというエビデンス(科学的根拠)を得ることが期待される。専門家会議委員らが、補助調査の一体化を高く評価している理由だ。

また、補助調査の一体化は、家庭の経済格差と、それに起因する子供たちの教育格差の拡大が、もはや放置できない状況にあると文科省が認識していると考えてよいだろう。

20年度から順次実施される新学習指導要領は、思考力の育成やアクティブ・ラーニングによる指導など重視している。しかし、このような教育では、家庭の経済力が高い子供の方が圧倒的優位に立つのは、教育関係者なら容易に予想できよう。新学習指導要領の下の学校運営では、家庭の経済格差がこれまで以上に重要な問題となるのは確実だ。

一見、あまり注目を集めないようなニュースの中にも、今後の学校運営を考える上でのヒントが隠れている場合がある。学校管理職は、それを見つける眼を持つことも必要だろう。

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