(新しい潮流にチャレンジ) カリキュラム・マネジメントの実践(2)

eye-catch_1024-768_takashina-challenge

教育創造研究センター所長 髙階玲治

単元展開の最適化を求めて

単元展開の指導力の重要性

カリキュラム・マネジメント(CM)には、学校として定める教育課程編成がある。4月当初の多忙な時期に年度重点目標や年間指導計画、校務分掌によるそれぞれの役割の遂行などが決められる。私が言う「ハードCM」である。

一方、教員それぞれが行う教科などの授業実践がある。単元に基づいて行う「主体的・対話的で深い学び」である。それを私は「ソフトCM」といい「ハードCM」と大まかに区別する。

この「ソフトCM」をどう実践するかが、子供の学びに大きく影響する。2019年の全国学力調査によれば、「ハードCM」よりも、「ソフトCM」の実施が低下しているという実態がみられた。しかし、学校の実態から言えば、「ハードCM」は必ずしも理想通りにはいかない。年度重点目標にしても、全ての教員がよく受容し、理解し、実践につなげるかは、かなり個人差がみられるであろう。

そして、授業は4月当初からスタートするのである。個々の教師による単元構成と授業実践による「ソフトCM力」が必要になる。この教師それぞれの「ソフトCM力」が充実しないと新学習指導要領が目指す教育実現はおぼつかない。そのため、教師個々は自ら「ソフトGM力」を磨くことが求められる。

その場合、よく「授業のデザイン力」と言われるが、個々の授業のみでは十分ではない。「単元」と言われるひとまとまりの学習展開をどう構想し実践できるかが、重要である。「授業」は単元構想の一場面である。その一場面を充実させるために単元というまとまりの中での展開過程を考える。そこに教師の「ソフトCM力」がある。

なぜ、「単元」にこだわるかと言えば、どの教材内容であっても、一定のまとまりの下で構成される。教科書教材の構成がそうである。ただ、そのまま単元化するのではなく、教師が子供の興味や関心、教材内容の質や量、学習プロセスと時間配分などを考えて「単元」として構成する。いわば、「単元展開の最適化」を目指すのである。

この考え方は古くから極めて重視されていて、戦後教育から続いているわが国固有ともいうべき授業観でもある。その単元構成がよくできるかどうかで教師の力量、つまり「ソフトCM力」が問われるのである。

単元構成による「ソフトCM」の実践

学校のカリキュラム・マネジメントを充実する方策として「単元」に注目し、「ソフトCM力」を高める実践例がみられる。

栃木県那須塩原市教委の施策である「なすしおばら学び創造プロジェクト」である(『VIEW21』2019年vol.1)。教委が先導して実践している珍しい例であるが、指導主事が学校訪問し「単元デザインシート」を作成し、授業研究を行うものである。

単元構成について次の考え方がみられる。

①その単元で身に付けさせたい資質・能力を明確化し、単元で学ぶ内容を整理する

②そのために、各授業場面でどのような学習形態(一斉・グループ・個人)にするか、教材、教具など学習方法や手段を考える

③子供は家庭で事前学習し授業に参加するという市特有の方策を実施していて、授業での知識を教える時間を減らし、グループ学習の質・量を高める授業展開を行う

④単元構成では、最初に単元のゴールを設定してから、各時間の適切な学習形態を考える。そのため、話し合い活動をたっぷり行う時間、一斉授業で行う時間など、柔軟な授業展開が行える

このプロジェクト固有の単元構成であるが、この手法を身に付けることで市の教員の「ソフトCM力」はかなり高まるであろう。単元を形式的な手法で展開するのではなく、柔軟な取り組みもまたみられるのである。

さらに興味深いのは、子供が家庭で事前学習し、それに基づいて授業に参画している点である。「何を学ぶか」という授業の見通しを持つことは子供の「主体的に学ぶ」意識を高める上で極めて有効である。パソコンやタブレットを使用しているかは不明だが「反転授業」を思わせる。子供中心の「対話的学び」が促進されるであろう。

アクティブ・ラーニングとしての単元展開

那須塩原市の取り組みがなぜ有効かと言えば、教員が単元についての構想をイメージしやすいからである。一定の型があって、その型のイメージで単元を構想できること、それが強みである。そこから徐々に最適な単元展開へと発展できる。

その意味で、「ソフトCM」として把握しやすいのは、新学習指導要領で提起されている「主体的・対話的で深い学び」の流れを単元展開のイメージとして考えるのが可能になるからである。

「主体的な学び」とは、自ら学ぼうとする態度であって、単に授業の「めあて」を教師が言えば、それで子供が主体的になるのではない。学習に働き掛けるのは子供自身であって、教師主導で導くのではなく、自ら課題に立ち向かう力を持つことである。従来から「動機づけ」という手法があった。

「対話的な学び」とは、自分の考えと仲間や他者の考えを交流し、相互作用や協働の中で学習の本質に迫る働きである。目指す方向があいまいであっては、ただの「話し合い活動」に終わってしまう。目標に向かって意志を統合させながら「共創」の学びを展開する。

「深い学び」とは、学習課題の追究において、学習の始まりに比べて、学習後にたどりついた「学び」がより質的に理解が深まったり、思考力・判断力・表現力などが高まったりすることである。授業の終末で「ほんとうにわかった」と納得できた状態と考えればよい。その落差が大きいほど学びが深まったと言える。

そこから単元での学びを振り返り、試行錯誤の過程の中でどのような学びがよかったかをたどることで、「学び方」を徐々に体得することにつなげたい。「学び方」を自覚できれば、そこに自ら学ぶ姿勢や態度が形成されるのである。それが最も重要である。

ただし、「主体的・対話的で深い学び」と言っても、この言葉の意味の中に「見通しを持って粘り強く取り組む」という学習態度が含まれている。

子供が学習の「見通しを持つ」ことは極めて難しいであろう。難しいが、子供の「学び」はそうあってほしい。「粘り強く取り組んでほしい」と考える。そこが重要である。

「予習」が導くアクティブ・ラーニング

ただ、子供が自ら考え、自ら学ぶことを目指したいが、実際には子供は多様で題材に興味・関心を持てないでいるなど、学級の子供の実態はバラバラのように見える。「ふたこぶらくだ」と言われる学力格差がみられる学級もある。どのような場合でも、子供個々がアクティブに学ぶにはどうあればよいか、を考える。

先に那須塩原市の単元構成について述べたが、子供は事前に家庭で学習してくるよう仕向けている。家庭学習は自学自習の場である。また、毎日学習するという学習習慣が身に付いている必要がある。さらに自分で考え・学習することが可能な「学び方」を知っている必要がある。

この学習が成立するためには、そのことを個々の子供が十分身に付けるための指導や訓練が必要である。そして結果として子供が身に付ければ、子供個々が自らの力で学習を進めるスキル、つまり「学び方」を獲得できるのである。子供にとって必要なのは将来に生かせる「学び方」を身に付けることである。「自学自習する子供は伸びる」と確信する。「学びに向かう力」の基盤を育てることである。

その場合、重要になるのが家庭学習における学びの仕方である。那須塩原市が事前に家庭で学習をするよう仕向けている、ということは、学校での授業を事前に予習することが含まれているのではないか。

実は、「復習」は必要だが、「予習」は極めて重要で、明日の授業にチャレンジする態度を子供に身に付けさせたい。「予習」は「復習」と違って、まだ学んでいないが、それでも、あれこれと考えることで授業への構えができる。その場合、「分かる」ことよりも考え抜くことが大事で、翌日授業で学習内容が分かると、本当に「深く分かる」のである。それが「予習」の効果である。「深く分かった」という思いこそ重要である。

「主体的・対話的で深い学び」は単なる学習展開ではない。それぞれに意味があって、それが「つながり」を持つ。単元展開を最適化することに努力すれば、教師にとっても真の「ソフトCM力」が磨かれるのである。

関連記事