「1人1台」の変革元年 学習者中心の教育へ

デジタルハリウッド大学大学院教授 佐藤 昌宏

EdTechがついに始動

全国の小中学校の児童生徒が、パソコンやタブレット端末を「1人1台」の環境で使えるようになります。昨年末に政府は、2023年度までに「1人1台」を実現するという経済政策を打ち出しました。EdTechの推進者として、さまざまな提言をしたり、啓蒙的なワークショップをやったり、関連ビジネスの支援をしてきたりした立場からすると、やっと実現する、との思いです。

デバイスを手にした子供たちは、辞書代わりに検索機能を使い、自らの興味と関心から自由に探究を始めるでしょう。

「ungoogleable questions」という言葉があります。グーグルが答えられない質問のことです。そういうものが探究の対象になっていくはずです。教員と生徒の関係も違ってきます。知識を伝授するだけの教員は、もはやグーグルやウィキペディアに勝てません。わからなければ、生徒に教えてもらってもいい。謙虚に一緒に学ぼうとすればいい。

学習者中心の学び

EdTechによって、教員の重要な役目はティーチャーからファシリテーターになっていきます。テクノロジーとソフトウエアをうまく使って、子供の学びをどうアシストするかを、第一に考えなくてはいけなくなる。もちろん、子供の自立を促すために背中を押したり、寄り添って声をかけたり、叱ったり、そこに先生方の力が必要なことに変わりはありません。

でも、オンラインでの繋がりの方が有効なこともある。教育は対面でないとダメとか、守旧的な考え方から自由になってほしい。いままでできなかったいろいろなことが可能になるはずです。

明治から150年の間、何かを学びたいと思ったら、学校に行って先生に教えを請わなければならなかった。いまは検索で大抵の知識は得られるし、誰とでも繋がれる。どこででも学びが手に入る。学校中心の考え方はもう通用しなくなっています。学習者を中心に教育を考えるのが当たり前になる。私たちはその変化を目の当たりにすることになるでしょう。

危険か可能性か

若年層のインターネット環境というと危険回避の話が先行するのですが、ITリテラシーとは本来、テクノロジーを使って自分たちを幸せにできる能力のことです。危ないからダメという話になるのは、大人が仕組みをわかっていないから。

子供たちは、インターネットの世界にどんどん入っていって、外国語も自動翻訳したりして、いつの間にか世界中の人たちとコミュニケーションをとっている。それを危険と見るか、可能性と見るか。未来を切り開くことができるツールを使わせないというのは、彼らの未来を閉じることにつながるかもしれません。

1人1台に対応できなくて、困る先生もいるでしょう。でも、何がボトルネックなのかに気づいて、自立してほしいですね。そういう時代なのだと理解してほしい。

先を見て生きる

ばら撒きになってしまう、という懸念もあります。以前に教育現場に電子黒板が一気に入りましたけれど、なかなか有効に使われていなくて埃をかぶっている学校も多い。そういう状況にしてはいけない。どう使えばいいのかを考える、というのが2020年の課題です。

単に揃えましたというだけではなくて、それを使って何をするのか、教育現場にイノベーションをもたらすような転機になるかどうかは、私たち教育に携わる大人にかかっています。

「先生」とは、単に先に生まれた人ではなく、先を見て生きる人のことだと教わりました。やっと向かうべき方向がはっきりと示された。振り返った時に、2020年が改革元年だったと言えるようにしたいですね。


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