働き方改革と働きがい改革

立教大学教授 中原 淳

世の中全体で「働き方改革」が叫ばれ続けている中、昨年は教育業界の中でも、教員の働き方改革についてさまざまな議論が起こった1年であった。学校という職場の働き方改革が、教員という職の採用力回復につなげていけるだろうか。2020年の教員の働き方改革について、ポイントを考えてみた。

変形労働時間制は特効薬ではない

教員の働き方改革は、今年どのような局面を迎えるであろうか。変形労働時間制が導入される法改正がされたが、私はあの法律が実効を持つとは思っていない。忙しい時間を夏の空いた時間にずらすと言うが、「そもそも夏は空いてないでしょう」と思う。「働き方を改革するという課題」に対する解決策にはならない。

本質的になすべきことは、労働時間を見直し、働きがいをもって、授業をできる環境を整えることだ。今持っている仕事のやり方を変えていくとか、個で当たっていたものをチームで分担していくとか、若い先生の力量を伸ばしていくなどの、いわば漢方治療的な働き方の見直しである。

進む教員の採用力低下

ビジネスの現場ではすでに、働き方があまり芳しくない企業や、働きがいを感じられない企業が、選別され始めている。優秀な人から出ていくし、働きがいのない職種になかなか人が入ってこなくなる。

職場は「メッセージ」だ。働きがいの感じられない組織には、優秀な人材は入ってこない。

実際に、教育業界も採用が難しくなっている。教員養成系大学の倍率は低下し、教育委員会では教員の臨時採用もできなくなってきている。

教員採用試験を受ける人自体も、減少傾向が続く。教員が確保できないために、校長や教頭などの管理職が授業を回さなければならない状況が起きている。

もっと悲観的な展望を言うと、このまま教員不足が進めば、本来であれば先生になるべきではない人が教壇に立つということにもなりかねない。質が低下する。

変形労働時間制ができたから「終わり」ではない。法律とはまた別に、各学校単位での働き方改革を進める必要がある。

横浜市の教員働き方改革で見えたこと

立教大学中原研究室と横浜市教育委員会が共同研究を通して進めている働き方改革は、①30問の調査を使って学校の現状を見える化し、②それを現場の先生や管理職の先生にフィードバックし、③そのフィードバック結果で対話を行い、④やめることや見直すことを決めて実行していく――という組織開発の手法を使用している。

昨年は80校で実施され、今年は500校まで広がる見込みだ。

この取り組みの中で僕らが見いだした結論は、「時間はここまでです」という、時間に上限をはめるような労働時間管理だけを単体で実施しても、やりがいが下がり、ストレスが増え、離職意向も高まるという、良いことが何もないということであった。

やはり、学校ぐるみで働き方を根本的に見直さなくてはならない。

「先生の働きがい」あっての「生徒の学びがい」

教員自身が「働きがい」を感じられなければ、生徒の「学びがい」に転化するわけがない。

生徒のために、働きがいを持って働ける教員を増やしていくためのチャレンジを、各学校単位でも続けなければならない。

ICTの活用に伴い、教師の役割も変革が求められるだろう。

働き方改革と、働きがい改革の両輪を回しながら、教員の役割はAIで代替できない分野へ、さらに高次化していく必要があると感じている。


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