新指導要領の全面実施 「質も量も」こなせるか

教育ジャーナリスト 渡辺 敦司

2020年度の小学校を皮切りに、いよいよ新しい学習指導要領が全面実施に入る。しかし現行でも「教科書をこなすだけで精いっぱい」という声が聞かれる中、本当に大丈夫なのだろうか。

実質的な学習内容増

今回の改訂は「学力の3要素」をさらに発展させて、教科等横断的に「育成を目指す資質・能力」を3つの柱で整理したのが最大の特徴だ。

一方で、学習内容の削減は行われなかったばかりか、小学校に限っても外国語科(高学年)・外国語活動(中学年)で年間35時間増となるほか、算数科での統計教育の充実、プログラミング教育の実施など、実質的には内容増となっている。

現行指導要領で求められている「習得・活用・探究」という方針も維持されたままだ。

新指導要領では、資質・能力の育成という「質」と、学習内容の習得という「量」の両面で、今まで以上に充実した取り組みが求められることになる。

そこで、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)とカリキュラム・マネジメント(カリマネ)の両輪により教育活動の質を向上させる重要性が、ますます高まる。

このうちALに関しては14年11月に中央教育審議会に改訂が諮問されて以降、「AL祭」とやゆされるほど関心が高まった。それに比べてカリマネは、取り組みの遅れが指摘されてきた。

全面実施を控え、本当に児童生徒一人一人に資質・能力をしっかり身に付けさせるような授業改善や教育計画が構想できているだろうか。

働き方改革と同時進行

これに関して示唆的なのが、経済協力開発機構(OECD)などで整理されているカリキュラムやコンピテンシーの考え方だ。

OECD教育・スキル局アナリストを歴任した白井俊大学入試センター審議役の説明によると、カリキュラムには▽政策立案者による「意図されたカリキュラム」▽学校や教師による「実施されたカリキュラム」▽学習者によって「達成されたカリキュラム」――の3段階がある。

これに対応して、獲得されるコンピテンシーにも▽政策立案者が想定するコンピテンシー▽授業(教師)が想定するコンピテンシー▽実際に生徒が獲得するコンピテンシー――があり、それぞれの間に生じるギャップをどう埋めるかが各国の課題になっているという。

そうしたギャップを埋める手だてをしっかり講じ、児童生徒一人一人に資質・能力をしっかり身に付けさせるような方略が求められよう。

しかし学校現場の現状を顧みれば、多くの教員が過労死ラインを超えて働く過酷な勤務実態が常態化している。

「学校の働き方改革」と同時進行で新学習指導要領に取り組むという、さらなる困難が現場に背負わされている。

検証し現場から声を

現在、中教審の初等中等教育分科会では「新しい時代の初等中等教育の在り方」が精力的に審議されている。

10月に開催された「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」で奈須正裕委員(上智大学教授)は、日本では学習内容や授業時数を国が細かく決め過ぎているとの見方を示しながら「現場の創意工夫に委ねるのが世界のトレンドだ」と指摘した。

新指導要領は、あくまで「意図されたカリキュラム」だ。学校での「実施」や児童生徒の「達成」にとって本当に妥当なのか。

現場ではその実現に向けて努力しながらも、次の改訂に向けて検証し、声を上げていく必要があるのではないか。


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