子供たちの格差 学校は正面から対応を

教育ジャーナリスト 斎藤 剛史

習得した知識の量よりも思考力の育成やアクティブ・ラーニング(AL)などをより重視する新学習指導要領が、2020年度の小学校から順次実施に入る。本格的な「21世紀対応型」の学習指導要領の実施により、日本の学校教育は名実共に新たな段階へと移行することになる。

その意味で、20年は、日本の学校教育のターニングポイントとなるだろう。

ALと子供の二極化

新学習指導要領を実施する上で、学校現場が最も配慮しなければならないことは何か。その一つは、間違いなく家庭の経済格差への対応だ。

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の分析結果では、家庭の経済力が豊かな子供は、そうでない家庭の子供より学力が高いことが明らかになっている。

しかも、基礎知識を問う「A問題」より、思考力などを問う「B問題」での学力差が大きい。事前に持っている「文化資本」の質と量が違うからだ。これは教員ならば、誰でも経験的に理解できる。

つまり、これまで通り家庭の経済格差は、学校には関わりがない、あるいは家庭の自己責任であるというスタンスのままで、新学習指導要領を実施すれば、ALで思考力などが身に付く子供と、ほとんど身に付かない子供に二極化していく可能性が極めて高い。

この子供の二極化は、単に習得した知識の量を競っていた教育の時代よりも、はるかに深刻な問題となろう。

階層社会になる恐れ

20年の東京五輪・パラリンピック終了後の日本経済を懸念する声が強まっている。

仮に景気が悪化していけば、家庭の経済格差は現在以上に拡大していくのは確実だ。

最悪の場合、小・中・高を通して、ALなどで主体的・能動的に思考力を身に付けた子供たちと、そうでない子供たちとの間に大きな開きが生じ、結果的に格差が固定化する「階層社会」に日本はなってしまう恐れがある。

とはいえ、グローバル化がさらに進み、人工知能(AI)の発達により社会が大きく変化していくこれからの時代に、思考力の育成などの教育は不可欠だ。新学習指導要領を後戻りさせることはできない。

防げるのは学校だけ

残念ながら、家庭の経済格差は、今後さらに拡大していくだろう。そうなると、生まれ育った家庭の文化的・経済的環境によって、子供たちの格差も広がり、二極化していくだろう。

それを防げるのは、学校だけだ。

これまで学校は、ALの導入など新学習指導要領の実施に向けて大きな努力を払ってきた。

新学習指導要領が全面実施に入る20年度からは、いかに子供たちに思考力などを身に付けさせるかという指導方法の改善と同時に、家庭の経済格差に目を向ける必要がある。

ある意味、これまでは学習指導の結果、「できる子供」と「できない子供」に分かれた。そして、「できない子供」をどうするかを考えればよかった。

しかし、思考力などの育成を重視する新学習指導要領では、ALを行うとともに、思考力育成の指導に対応しない(できない)子供たちに対して、どんな配慮や支援を行うべきなのかを検討することが求められる。

今年からは、家庭の経済格差は、社会福祉の問題でも家庭の自己責任の問題でもない。

学校が正面から対応すべき課題として取り組む必要がある。

そうでないと、学校教育が日本の階層社会化に加担してしまうことになりかねない。


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