大学入学共通テストと中国の教育改革 外国の制度を学ぶ必要性も(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

令和2年度より導入される大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)に関し、英語の民間試験導入延期に続いて国語と数学の記述式問題の導入が延期された。

英語の場合、民間試験の実施場所や受験費用を負担する家庭の経済状況に対する格差が、記述式問題の場合、民間企業による採点の質の確保に対する不安がいずれも解消されない状況である点がその主な理由であった。さらに全国高等学校長協会(全高長)をはじめとする高校サイドからの反対も多かった。

共通テストに記述式問題を導入しようとした狙いは、高校における「主体的・対話的で深い学び」による授業改善を促進するためだ。

2014年12月に出された中教審答申では、現在の高校の授業が大学入試対策に重きを置いていること、大学入試問題も暗記した知識を問う傾向が強いこと、その結果現在の高校が知識伝達型の授業に留まりがちであり、「生きる力」の育成につながっていないことがその背景にあると指摘している。

今回の記述式問題導入の延期は文科省の準備不足が要因にあるのは事実だが、記述式問題が共通テストに導入されるのは時間の問題である。今回のような問題の解決策に妙手はないのだろうか。

先般参加したある学会の研究発表で興味ある話を聞いた。中国の教育改革の話である。早稲田大学教育・科学総合学術院常勤講師の李軍氏によれば、中国の中学・高等学校では日本同様、これまで教え込み型の授業が主流であった。

しかし、21世紀に入り大規模な基礎教育課程(日本の学習指導要領にあたる)改革を実施し、併せて高校・大学入試改革を行った結果、子供の思考力・表現力等が高まったそうだ。

大学入試改革例として「材料作文」の導入がある。「材料作文」とは、絵図や詩歌、論理的文章などの材料を問題の要求に基づき読み取りながら、解答者が自らテーマや文体などを設定し作文をするというものである。

例えば、ある会話文について「この文におけるいくつかの意見を整理した上で自分の考え方や立場をまとめ、自らテーマ、題目、視点を設定し文の内容を中心に800字以上の文章を書きなさい」といった問題が出される。

採点のポイントは、①材料に書かれた複数の意見や主張を整理したか②複数のテーマから焦点を絞って自分の意見や主張をまとめたか③)自分の意見や主張を支える根拠を示したか④材料に出ている多様な意見をどのように自分の作文の中に生かし、どのように吟味、取捨選択、活用したか――の4点である。

つまり、筆者の考えを読み取る能力よりも自らの知識、経験、認識などと照らし合わせながら、自分の考えを採点者に伝える能力が解答者には要求されるのだ。

この改革は、入試対策を意識していた高校の授業に大きな変化をもたらした。国語の場合、従来教科書中心、読解中心の「読むこと」の指導も、読者(生徒)がその内容をどう捉え、価値付けをするかといった「批判的読み」中心の指導になったという。

わが国の大学入試センターでは共通テストの導入決定を受け、同テストの試行調査を実施し、模擬問題を公開している。

2018年度の問題を例に挙げると、国語の自由記述問題で「テクストの精査・解釈を踏まえて発展させた自分の考えを解答する問題」が一つ出題されている。しかし、字数制限が80字以上120字以内と少ない量であるとともに、それ以外にも作文の正答条件が4つもあり、前述の中国の材料作文と比べると自由さは感じられず、自分の考えを表現できるものとは到底思えない。

大きな改革時に外国の制度などを採り入れてきたわが国の先人たちに今こそ文科省は学ぶ必要があるのではないか。


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