休みなき教育改革 いま立ち止まって考えよう(寺崎千秋)

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

改革の連続 教師も子供も余裕なし

平成時代の後半、義務教育費国庫負担制度の見直しなど、教育改革の波が学校に押し寄せてきた。当時、全国連合小学校長会は学校がこうした波に飲み込まれないよう、教育改革や教育課程改訂への展望を持ち改革に計画的に取り組むため、2007年2月に『「展望と計画」作成資料―新しい時代を拓く学校経営のために―』を作成して全国2万2000の小学校長に配布し、リーダーシップの発揮を促した。

取り組みなどの内容は「教育基本法改正、教育振興基本計画の策定、学習指導要領の改訂、特別支援教育の実施、全国的な学力調査の実施、学校評価ガイドラインの実施、教員給与の見直し、幼児教育と小学校教育との連携・接続、小中一貫教育、小中連携、教員免許制度の導入、教職大学院の導入、民間出身者の管理職登用、地域運営学校」などに関するものであった。今になれば全て実施されたものであるが、当時、これら改革を学校でどう受け止め取り組んでいくかが重要な課題であった。

その後、改革はさらに続き、時代の方向に向けた改革、学校におけるさまざまな課題の解決に向けた改革や施策などが目白押しとなり、学校に矢のように降り注いできた感があった。教育課程で言えば、総合的な学習の時間の導入、外国語活動・外国語の導入、特別の教科「道徳」の導入、資質・能力の三つの柱の重視、主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善、カリキュラム・マネジメント、キャリア教育の重視、プログラミング教育の実施、そして評価の改善――などであり、休むところなしである。

今回の改訂では、各教科等の指導内容の削減はしないにもかかわらず、指導時間を要するアクティブ・ラーニングを重視することから、授業内容・時間は目一杯となっている。すでにコップから水があふれている状態である。教師ばかりでなく子供の生活も余裕がなくなっている。

過労死の水準を越える勤務時間が問題となり働き方改革が始まっているが、大本の教育内容は手つかずで、効果はあまりないだろう。余裕がないから、いじめや不登校の問題にもじっくりと取り組めないのが実情ではないか。

一人一人がじっくり考え、話し合ってみる

ここらで一度立ち止まってこれまでを振り返り、やってきたことを見直してみる必要があるのではないか。そんな時に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という大問題が生じた。

9年前の東日本大震災の時も、自分たちの生き方や在り方を振り返った経験がある。地震や津波という自然の恐ろしさを体感したからである。今回は姿が見えない恐ろしさがある。収まるどころか、どんどん広がり、状況が悪化の方向にある。学校をどうするか、それぞれの地域で苦慮し工夫して対応している。学力だけではなく、心身の健康・安全をどう保持するか悩みながらの対応であろう。

こんなときだからこそ一度立ち止まって振り返ってみないか。ある若い教師は、「この機会に学習指導要領をじっくりと読んでみる」と言っていた。それもよいだろう。忙しさの中で、学習指導要領や解説書をじっくりと読んで考えることができなかったのだろう。あるいは、これまでの教育改革のなかでの自分たちの教育を振り返ってみるのもよいのではないか。

改革と言われ進めてきたものが本当に子供たちのためになっているのか。学習指導要領の内容は本当に一人一人に身に付いているのか。教育格差が拡大していると言われるが、子供たちにどのような影響があるのか。先行き不透明といわれるが、子供たちにとってこの先どうあることが望ましいのか、学校・教師ができることは何か、しなくてはならないことは何か。働き方改革は自分たちの望ましい、願う方向に進んでいるか。このような課題も掘り出してみよう。

この機会に一人一人がじっくりと考えてみる。職場で、皆で考えを出し合い、話し合ってみる。答え、結論はでなくてもよい。こうしたことが今、大切であり、必要だ。


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