なぜ子供たちに会いたいのか 学校を考えるヒント(斎藤剛史)

教育ジャーナリスト 斎藤 剛史

安倍晋三首相が4月7日に「緊急事態宣言」を発令したことで、東京都など7都府県を中心に多くの自治体が現在も休校を継続する事態となっている。一方、政府は在宅を余儀なくされている子供たちに遠隔授業などを行うため、「1人1台」の情報機器を整備するGIGAスクール構想の前倒しなどを緊急経済対策として打ち出した(本紙電子版4月7日付)。今後、学校はどうなるのか、どうすべきなのか。

学校の「常識」「当たり前」を見直す

正直なところ、新型コロナウイルスの感染拡大による休校がここまで長期化すると思っていた学校関係者は少ないだろう。4月からの新学期にいったん学校を再開した自治体も再び休校を迫られたところが多い。いずれもゴールデンウイーク明けの5月6日を学校再開のめどとしているが、そのときになって本当に学校が再開できるという保証はない。最悪の場合、休校はもっと長期化する可能性もある。手洗いとうがいの励行、教室の換気や座席間の距離を離す程度の感染防止対策では、保護者は納得しないだろう。

ところで筆者は、先の解説(電子版3月30日付)で、「学校における感染防止に必要なのは、従来の教育活動のスタイルから脱却するという学校や教員の意識改革だ」と述べたが、現在は意識改革という言葉が安易に使われる傾向があるので、誤解のないように少し補足したい。

これまで学校は、「密閉」された空間に、子供たちを「密集」させ、教員や子供同士が「密接」な距離を取りながら指導してきた。それが常識であり、当たり前だった。筆者が指摘したかったことは、新学習指導要領の実施や学校の働き方改革も踏まえて、そんな学校の「常識」「当たり前」を見直す必要があるということだ。そして、それを丁寧に保護者などに説明しておくことも求められる。

本当の意味でのアクティブ・ラーニング

今年度の小学校からスタートした新学習指導要領は、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を柱の一つにしている。話し合い学習やグルーブ討論などを取り入れる授業改革を予定していた学校も多いだろう。しかし、新型コロナウイルスの影響で、子供同士が「密接」な距離となる話し合い学習は難しくなった。グルーブごとに机を集めることも困難で、当分の間、従来のような子供全員が教員の方を向く一斉指導の授業形態を取らざるを得ない。

まさに新学習指導要領の実施に水をかけられた形だ。だが、見方を変えれば、本当の意味でアクティブ・ラーニングを実施する契機ともとれる。例えば、授業の最後に話し合いさえさせれば「主体的・対話的で深い学び」になると安易に受け止めていた向きはないか。

「主体的・対話的で深い学び」は、必ずしも一斉指導を否定するものではない。一斉指導の中で、どうアクティブ・ラーニングを実施するか。それに取り組むことは、逆に教員の「主体的・対話的で深い学び」に対する意識を高めることにつながる。まあ、従来通りの授業でよいと安心する教員もいるだろうが…。

学校のICT化は予想を超えて急速に進む

見逃せないのは、新型ウイルスによる休校の長期化で、今後、学校のICT化が関係者の予想を超えて急速に進むことだ。政府のGIGAスクール構想は当初、2023年度までに小中学校で「1人1台」の情報端末を整備するとしていたが、休校の長期化により遠隔授業などを進めるため、2020年度中に計画を実現するための経費が政府の緊急経済対策に盛り込まれた。実際は、タブレットの供給量などの関係で、今年度中に全ての小中学校に整備するのは困難だが、それでも子供たちが文房具のようにタブレットを扱う日がくるのはほぼ確実だ。

そうなると、単なる知識のみの伝達は動画による遠隔授業で済むようになり、学校の授業では知識伝達以上のことが求められるようになる。いわゆる「反転学習」だ。これまで学校関係者は、GIGAスクールや遠隔授業といわれても、どこか自分とは関係ない将来の出来事と考えがちだったが、その実現は予想以上に早いかもしない。

そのとき学校には何が求められるのか、どうあるべきなのか。例えば、子供たちは長い休校の間に、学校に行きたいと思ったに違いない。また、教員も子供たちに会いたいと思っているはずだ。しかし、教員から知識を伝授してもらいたいから学校に行きたいと思った子供は少ないだろう。一方、知識を教えたいから子供たちに会いたいと思った教員も少ないはずだ。では、子供たちはなぜ学校に行きたいと思うのか、なぜ教員は子供たちに会いたいのか。そこにこれからの学校の在り方に関するヒントがあると思う。

新型ウイルスの蔓延(まんえん)という想定外の出来事によって、遠隔授業などが普及・本格化する前に、これまでの学校や教員の「常識」「当たり前」を見直すことが求められている。


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