授業再開と指導計画 「生きる力」への工夫(工藤文三)

教育新聞論説委員 工藤 文三

3月以降、全国の学校が臨時休校に入り、その後5月末まで休校を延長する地域や連休明けから授業を再開している地域もみられる。

いずれにしても授業再開後は、3月の休業中の学習および4月以降取り扱うべき内容の学習からスタートする。授業の実施に当たっては、感染リスクを避けるさまざまな工夫や子供たちの心のケア、家庭との緊密な連絡など配慮すべきことが多い。以下では、これらの条件を踏まえながら、教育課程の編成・実施と指導計画の作成の工夫について考えてみたい。

教育課程編成・実施の方針の確認

年度替わりに際して人事異動があり、新しい校内体制で取り組みがスタートしている。また、この間教職員の在宅勤務が続き、打ち合わせ時間が十分でないまま学校の再開に臨むケースも想定される。そこで授業開始に当たっては、今一度学校教育目標、教育課程編成の方針や重点事項などを再確認し、教職員全体で共有することが大切である。

新型コロナウイルスによるパンデミック後の世界や私たちの生活がどのようになっていくかは、まだ見通しがつかない。治療薬やワクチンが行き届くまでには年単位の時間がかかり、それまでは、いわゆる「新しい生活様式」が求められよう。今回の事態は、個人と他者、個人と社会・世界とが密接に関連していることを教えている。また、さまざまな感染症と闘い、共生関係の中で、私たちの生活が成り立っていることを教えている。

新教育課程は、主体的・対話的で深い学びやカリキュラム・マネジメントといった、教育活動の「内部」の再構築を求めている。この学びが学校教育の「内部」に留まるのではなく、今回の事態も含めたさまざまな課題について主体的に学び、多角的に理解し、真の「生きる力」につながることを目指したい。

指導計画見直しの工夫

今回直面している事態は、授業時数の確保のめどが立ちにくいこと、通常年度のような学期のサイクルが組めるかどうかが明確でないことなどが挙げられる。

授業時数と内容の関係は、学習指導要領総則にも記載されているように、形式的な関係ではなく、指導に必要な時間を実質的に確保するのがポイントである。学校教育法施行規則で授業時数を「標準」と定める趣旨は、災害などによって標準時数を下回ることがあるとも想定している。

言うまでもなく、指導内容の取り扱いの順序は特に指示がある場合以外は、工夫が可能である。

学校再開に当たっては、年間の授業日数と授業時数の確保が十分でない場合の指導計画について検討しておく必要がある。その際、次のような着眼点が想定される。

①年間指導計画における単元の規模の検討である。各単元の中には、新課程の最初の授業であることもあって、主体的・対話的で深い学びに関わる時間や定着のための時間を設定していることも想定される。これらの時間設定が適切かどうか、再度検討して各単元への時間配当を吟味する。
②各単元の取り扱いについて、重点的に指導すべき内容を精査することである。何が「重点」かは、学習指導要領及び解説の記述や、他の単元や学年における学習との関連から判断する。「重点」でない内容は精選してもよいという意味ではなく、焦点化して確実な定着を目指すという意味である。また、単元内の内容の組み替えや結合を行って時数の調整を行うことも考えられる。
③単元相互や他の学年との関連付けた取り扱いを工夫することである。学習指導の重複を避けより効果的な学習を可能にするために、関連する内容をどちらかの内容に取り入れて取り扱ったり、組み替えて取り扱ったりすることが考えられる。

以上の作業によって整理された事項はあらかじめ指導計画の対応箇所に記号などを付しておき、時数の調整が必要になった場合に活用できるようにしておくとよい。学習指導に見通しを持っておくことは、児童生徒や保護者にも安心感を与える。

授業が着実に進められ、子供たちが安心と安定の日常を取り戻していくことを望むばかりである。


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