学校再開 思い切った教育内容の精選が必要(寺崎千秋)

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

休校中の学校の工夫と努力

緊急事態宣言が継続された際に、対応に取り組む学校の保護者向け通知や連絡を東京都内の小学校8校から送ってもらった。実にきめ細かく対応しているのが分かった。

個々の学校の実態は似ているようだが実はさまざまな違いがある。地域性や歴史がある。国や教育委員会の通知などを具体化し、具現するのは学校である。十把ひとからげとはいかないところであり、学校ごとに工夫や苦労がある。校長のリーダーシップの発揮が如実に現れるところでもある。全国の各学校の創意工夫や努力に感謝したい。

新しい生活様式の提言

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は5月4日、感染予防のために「新しい生活様式」の実践例を公表した。感染がいったん収束しても第2波や長丁場に備えるためだ。

一人一人の基本的感染対策として「人との間隔はできるだけ2メートル(最低1メートル)空ける。症状が無くてもマスクを着用。手洗いは30秒程度かけて水とせっけんで丁寧に洗う」を示した。

日常生活を営む上での基本的生活様式として「まめに手洗い。咳(せき)エチケットの徹底。こまめに換気。身体距離の確保。『3密』回避。毎朝、体温測定し、健康チェック」。食事では「料理は一人ずつ、会話を控えめに、対面ではなく横並び」としている。

働き方の新しいスタイルとして「テレワークやローテーション勤務。時差通勤。会議などのオンライン化」を示している。5月14日の専門家会議の提言でも「新しい生活様式」の実践を求めた。緊急事態宣言解除後も同様であろう。

学校再開後の子供たちの実態

文科省はこの間、学校再開などの通知やこれに関するQ&Aなどを出し、各教育委員会もこれに準じて管下の学校の指導に当たってきた。当面は、部分再開から始めて、徐々に全面再開に向けて歩むことになろう。

これまでのところ、遅れている学習に対する不安から、これを早く取り戻すことに目が行きがちだが、心の面、体力・健康の面とのバランスを図ることが必要である。学力の回復に集中するあまり、心の面の不安定化、体力・健康の低下を見落としかねない。夏休みの短縮は熱中症との戦いになる。土曜授業の実施は子供・教師の心身の疲労が重なる。単なる数字合わせではできない。

結果的に学習どころではない子供が増加する懸念が大いにある。この間の格差の拡大も学力だけではない。心、体の面でも個人差が大きく広がっていることが想像される。一人一人のきめ細かな観察と対応、個に応じた指導、丁寧な関わり方がますます必要になるだろう。神経を使い、時間の掛かる仕事で教師の負担は増加する。

教育内容の削減・精選への決断

このような中で、「新しい生活様式」を学校生活に当てはめるとどうなるか。当面は子供たちも目新しさや必要性からなじもうとするだろうが、すぐに無理なのが露見するだろう。子供の本質にそぐわないからだ。

そして、一つ一つの教育内容、指導事項にかける時間がより多く必要になるのは目に見えている。どう見ても計画した教育課程はこなしきれまい。そうなると、当然ながら教育内容の削減や精選が必要となる。

新教育課程がスタートするはずであったが、移行期間から目いっぱいのきゅうきゅうの状況であるとの多くの声が学校から上がっていた。満杯の上になおこの状況をこなそうとすれば、あふれるだけである。あふれるのが子供であっては困る。

この機会、非常時であることを機に思い切って内容の削減や精選に取り組むべきだろう。遅れ解消に数年かけるとの考えもあるが、まずは内容の見直しが必要である。満杯の状況で進めれば、危機管理の視点も見落としがちとなる。国、教育委員会の決断を促したい。

新しい生活様式に即した学校生活様式づくりには、それを可能にする教育内容の見直しと確かな危機管理の取り組みが必要なのだ。各学校が安心してじっくりと学校再開、教育の遅れ回復と進展に取り組めるよう思い切った環境づくりを進めるべきである。


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