少人数学級の実現を 学校の新しい生活様式(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

日本社会の欠点があからさまに

緊急事態宣言が全国的に解除され、全てではないにせよ人々の生活が元に戻ろうとしている。地域差はあれ、学校も再開され学校には子供たちの明るい声が戻ってきた。第2波の到来を危惧する声もあるが、企業も家庭も学校もそれまでの自粛生活や感染からの防止策を教訓にしてそれぞれが「新しい生活様式」を歩んでいくしかない。

一方、今回の騒動で感染症防止と対応について現在の日本社会の欠点があからさまになった。政治関係で言えば、外出禁止令やPCR検査の一斉実施など日本以外の国々が即座にとった対策ができないなどの法整備の課題、医療関係では隔離病棟やベッド数の圧倒的不足、医療器具の緊急配備時の態勢の未熟さ、マスクや消毒液など医療製品の国内自給自足体制の脆弱(ぜいじゃく)性などの課題がある。そして、教育ではオンライン授業に対するソフト・ハード両面がほとんど未整備といった課題である。

これらは先進諸国との比較で明らかに後れを取っているものに絞り指摘したが、いずれも地方自治レベルで対応できるものではない。国がその基盤を構築するものばかりだ。とりわけ予算配当では常に後回しにされる教育関係については、教育関係者だけでなく全国民が声を大にすべきであろう。

ICTに併せ少人数学級を

私は前述のICT(情報通信技術)環境と併せ、30人以下の少人数学級の実現を最優先に挙げたい。後者に関しては、コロナ対策の一つとして政府が提唱するソーシャルディスタンス対応にもなる。

学校再開後、しばらく多くの学校では教室内の「3密」を避けるために時間差を設け子供たちの登校を促している。いわゆる分散登校である。しかし、第2波も含めた今後の対応を考慮したとき、少人数学級であれば常時ソーシャルディスタンスは確保しやすくなる。これもこれからの学校の「新しい生活様式」ではないか。

「9月入学制」を実施した場合、大幅な教員増が必要になることが予想されるが、政府にそうした意欲があるのであれば、「9月入学制」の実施が困難になった今、その予算と労力を本来の教員定数改善に還元すればよい。

大転換期を素早く察知して

ICT環境の整備についても述べたい。ある調査によれば、今回テレワークを実施した企業は、従業員300人以上の大企業では9割近くだったが、中小企業では半数以下だったという。大企業・中小企業ともテレワーク実施上の課題として、社員の自宅のテレワーク環境の未整備や社員本人のICTを扱うスキルの未熟を挙げたところがいずれも3割以上あったという。

これを見て、ICTに対する意識も環境も日本の社会全体が十分ではないこと、その原因が学校のICT環境の未整備にあるのではないかと感じ始めている。各大学においても学生の自宅でのICT環境やそのスキルは個人差が大きいとされる。実際、スマホは使いこなすがパソコンを使っての文書作成はできないという学生も多い。

国がSociety5.0やGIGAスクール構想を声高に叫んでも、学校現場に目を向ければ、1台のパソコンを複数の子供が使用している学校がまだまだ多い。OECDによるPISA調査において読解力が直近2回の調査で順位を下げているのを、日本の学校におけるICT環境とそのスキル指導の不足から来ていると指摘する識者もいる。

今回の新型コロナウイルス騒動はまだ収束していないが、人類の歴史に残る大きな出来事になろう。この騒動はおそらく今後の世界の政治、経済、社会、文化全てを変えるきっかけとなる。まさに新しい時代が到来するのだ。そうした大転換期を誰よりも早く察知し、中長期的対策をとって世界の範となるのがわが国日本であってほしい。


関連
関連記事