Withコロナの学校 子供の居場所を作る大切さ(中原淳)

立教大学教授 中原 淳

都内でも、教員のコロナ感染者が出始めている。教職員や児童生徒に感染者が出れば、学年や学校が休校となる。学校再開で通常ペースに戻りつつある学校も多いが、今はまだ平時ではなく「Withコロナ」であることを忘れてはいけない。いつ学校が再び休校に陥るのか分からない状況が続いているのだ。そしてそれは年単位でしばらく続く。

現在学校では、手洗いの徹底や校内の消毒作業などに細心の注意を払いながら、短く限られた時間を使って教科の履修を進めていると思う。小学生、中学生の親のひとりとして、教職員の皆さまに感謝申し上げたい。

夏休みや土曜登校日も使って、遅れた分を取り戻す計画を立てている学校も多いだろう。しかし、それが行き過ぎてしまった場合、子供たちが学校から離れていくことを最も懸念している。

問題は「全てを履修しなければならない」「詰め込まなければならない」という焦りを教員が持つことであり、それが子供たちに伝わることである。

今は平時ではない。よって、昨年と同じようにカリキュラムをこなすことはできない。そのような中で、履修を急ぎ過ぎれば、子供たちの学習逃避が起こる可能性がある。

休校期間中、子供たちは学べていたか

立教大学経営学部・中原淳研究室で中高生を対象に行った調査によると、休校期間中に自宅学習ができるかに影響する要因として、▽学校生活を楽しめていたかどうか▽学校で他者との関係性が築けていたかどうか▽休校中の教員とのコミュニケーションが取れていたかどうか――の3つの条件が浮かび上がってきた。

休校中の自宅での学習時間に大きく影響を及ぼす3つの要因

いずれも、「学校に自分の居場所があり、心理的安全性が確保されているか」を表す内容だと考える。つまり、学校や学校の人間関係が、自分の心の中で肯定的なものになっているかが、自律的な学びの態度に影響するということだ=図参照。

また、学校ICT化の取り組みの中で、最も学習時間に影響を及ぼしたものは、「担任などの学校関係者から送られてくる情報発信」だったことが分かり、ここでもやはり人を介したコミュニケーションによって、子供たちの自学自習が動機付けられていくことがうかがえる。

一方で、家族からの声掛けの影響力はあまり高くなく、子供たちが学びに向かうためには、教員や子供同士のつながりの存在が重要であるという点が浮き彫りになった。

新しいクラスメートの顔と名前が一致していない

学級運営の中でも、ホームルームや他愛(たあい)もない話ができる休憩時間は、子供たちの心の中に「心理的安全性」を作っていくことに寄与していたのではないだろうか。

クラスの名簿に自分の名前が載っていれば、そこが自分の居場所だと思えるわけではない。その教室の中で授業を受けさえすれば、クラスに対する帰属意識が生まれるわけでもないだろう。

筆者は、担任の先生やクラスメートがお互いに知り合うことを通じて、「心理的安全性」や「自分の居場所」が築かれていくと考える。

クラスメートの顔と名前の一致は、「お互いに知り合う」ことの最初のステップである。しかし現在は、先生も児童生徒も学校滞在中はずっとマスクを着用し、場合によってはフェースシールドさえしている。友達同士のおしゃべりも制限されている。給食も、全員が前を向き、無言で食べている。このような状況下では、各学校の新1年生や、クラス替えによって新しい顔ぶれになった学級では、クラスメートの顔と名前が一致していない状態が続いている可能性が高い。

これでは、「学校に自分の居場所がある」と思うことは難しいだろう。特に「新1年生」は、学校にそもそもなじめていない場合もある。

優先順位の最上位は「人間関係の構築」

いつ休校になるか分からないというWithコロナ時代の学校教育は、休校期間中の学びを止めないために、「学校再開中に何をしておくべきか」の取捨選択に、今まで以上に気を配っていく必要がある。

その優先順位の中で、最上位に上がるのは「人間関係を構築すること」である。具体的には、「教員と子供、子供同士、学校と子供との心理的結び付きをつくること」だと筆者は考える。学校に「自分の居場所」を作ってあげることで、学習の基盤もできる。

不幸にも、学校が再び休校せざるを得ない状態になったときであっても、子供たちの心の中で学校や学びをつなぎ留めることができるからだ。さらにオンラインでホームルームなどを行うことができれば、休校になったときにでも、子供の学習時間の確保も可能になる。

もちろん教員の多くは、平時の学級運営であれば、新しい年度の最初では当たり前のように人間関係を構築するための時間を確保していたと思う。しかし、今年度はその「年度の始まり」が、長期にわたる一斉休校によってごっそり欠損している。

今、われわれの前に残っているのは、「未履修の教科・単元」と「いつまた大幅に減るか分からないこれからの授業時間」である。このような状況において、履修を急ぎたい心理が働くのは当然のことであるが、まず優先すべきは、学校と子供のつながりをつくることであり、子供の心のケアを行うことだ。さらには、子供が学校を好きになることだと思う。

その上で、カリキュラムの中で中核的な内容のみを選定し、それを授業で扱う。それ以外のことに関しては、家庭での宿題にしていくなどが考えられるだろう。

オンラインで課題管理を行ったり、学習できたりすればなおよい。そのような環境を今から整えていくことは、いつくるか分からない「再度の感染拡大」に対して、セーフティーネットの提供につながるだろう。


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