ビルド&ビルド 教職員の負担増やめよ(妹尾昌俊)

教育研究家、学校業務改善アドバイザー 妹尾 昌俊

ノンストップ労働が当たり前

各地で学校が再開されて1カ月半から2カ月になろうとしている。読者の皆さんの学校ではどんな様子だろうか。子供たちが元気なのはいいが、先生たち、疲れてはないだろうか。

先日の毎日新聞(7月7日)では、ある小学6年生の担任に密着した記事が載っていて、多忙に拍車が掛かった様子をよく描いている。放課後に消毒作業を終えた、その先生がつぶやいた一言が「僕、きょう、水分取りましたっけ」だ。休憩、休息もほとんどない状況なのだ。

公立高校に勤める私の知人も、昨日は夕方にやっとおにぎり(お昼ご飯)を頬張ったと述べていた。

長時間労働も大問題だが、労働の長さだけでなく、質にも注目していく必要がある。過密労働も深刻だ。2016年の教員勤務実態調査という国の大規模調査でも、教諭の休憩時間は1日3~4分程度しかないことが確認された。実は2006年調査のときも休憩がほとんど取れていないことは判明していた。この15年あまり、この状況はまったくと言っていいほど、改善されておらず、コロナ禍で悪化している可能性もある。

この問題は、県庁や市役所の職員とはかなり違っている。教育委員会には教員出身者と行政職の方がいるが、後者は昼休みをしっかり取る人が多い、と聞く(もちろん業務の忙しさなどにもよるが)。学校はノンストップ労働が当たり前になってしまっている。

消毒や清掃作業、登下校指導は手放したい

こうした過密過重労働の日々で、なおかつ、新型コロナのことや熱中症のこと、あるいは、いじめ問題などで先生たちの気は張り詰めたままだ。近いうちに「ぶつん」と切れてしまう人が出てきても、不思議ではない。

文科省は6月下旬にメンタルヘルスについて注意喚起する通知を発出しているが、内容は、はなはだ踏み込み不足だと思う。国も教育委員会も過密労働に耐えてきた人たちが幹部になっているからかもしれないが、人間はサイボーグではないし、もっと繊細でフラジャイルだ。

文科省の支援と働き掛けも大事だが、教育委員会や学校にぜひ行動してほしいことがある。ここでは3点に絞る。

第一に、教職員の専門性などが関係ない業務は、手放せるようにしたい。私が教員向けに6月に独自にアンケート調査したところ、消毒や清掃作業に加えて、登下校指導にも8割近くの公立小中の教員が従事している。

こうした業務は専門業者や地域の方にお願いして、教職員は本来業務にもっと集中できるようにしていくべきだし、先生たちの空き時間を少しでも確保していくべきだ。

コロナ前から私は申し上げてきたが、通常の県庁や市役所で、職員はトイレ掃除などはやらない。学校だけが予算を取らずに、教職員と児童生徒の「無償労働」に甘えてきたわけだ。教育委員会はぜひ予算獲得に動いてほしい。

外部や地域の人を入れると、感染リスクが高まるという声も聞く。地域の感染状況が危機的ならその心配はまだ理解できるが、教職員が掃除などをしているから、感染リスクがない、なんてこともない。むしろ、疲れて免疫力の落ちた人が集まる職員室なら、感染リスクは高いだろう。できうる感染対策は講じた上で、外部の力を借りるべきだ。

スクラップ、引き算思考が必要

第二に、わざわざ、教職員の仕事を増やす施策はやめてもらいたい。必要性が高いものがあるなら、別のものをスクラップしてほしい。土曜授業はよく考えてほしい。かたや、教員採用では教職の魅力をPRしようとして、その一方で、土曜も休みなく働かせ続けるのは、矛盾している。子供たちも疲れているのではないか。

学校によっては、授業動画づくりを再開後も課しているところがある。ICTの活用はどんどん進めてほしいが、それは通常の授業や家庭学習で推進すればよいのであって、放課後に動画づくりをすることは優先度が高いとは思えない。

第三に、児童生徒向けの相談窓口の周知を徹底してほしい。子供たちの悩みにしっかり耳を傾けてくれている先生方は多いとは思うが、はっきり申し上げて、忙しく見える人には相談しづらい、ちゅうちょする子もいるのではないか。コロナ禍で子供たちのストレスも高い。SOSをキャッチできる仕組みは重層的に用意しておくべきだ。


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