夏休みはOODAを試す好機 宿題はオンラインがいい(松田孝)

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO・東京都小金井市立前原小学校前校長 松田 孝

求められるOODAでアジャイルな経営感覚

前回、「今こそ学校のリーダーが、OODAでアジャイルな経営感覚をもってさまざまに重なる通知や「学びの保障」総合対策パッケージに対峙(たいじ)すれば、今のコロナ禍の状況を、新しい「学び」の様式を描き出すチャンスに変えることができる。」と書いた(教育新聞電子版6月12日付)。

まさにO(Observe:観察)、O(Orient:方向付け)、D(Decide:決定)、A(Action:行動)のループを何度でも回して、先の読めない状況で結果を出していくこの意思決定手法(OODAループ)を試す好機がやってくる。夏休みだ。

今年度の夏休みは、例年と大きく違う。多くの学校では、その期間を短縮して授業時数の確保に充てた。東京では7月下旬から始まって、その期間も一カ月余りであった夏休みも、今年度は8月に入ってからの開始となって、期間も3週間程度となった。視野を全国に広げれば、8月の第1週まで授業を行うところもあれば、お盆明けから学校が再開される地域もある。

コロナ禍に翻弄(ほんろう)された5カ月間の疲れを癒やすために、多くの校長は「教職員にはゆっくりと心身を休めてほしい」と気遣う。そして、夏季休暇や土曜授業の実施による週休日の変更によって、2週間程度は全くの休暇が取得できる。今年度は夏季休業中の水泳指導もない。

学校現場の今 ――Observe(O:観察)――

学校は再開したけれども、今また感染の「第2波」がやってきた。状況が刻々と変化する中にあって、学校は感染の拡大防止に最大のエネルギーを費やし、臨時休校においてその重要さが再認識された学校の機能――全人的な教育活動の推進とセーフティーネット機能――を精いっぱいに発揮しようとしている。

そして夏休みを目前に控えて、学校におけるICTの利活用は、筆者が教育CIO補佐官を務める小金井市では、学習ポータルへのアクセス数が臨時休校中の半分となっている。子供たちが学校に登校して対面授業が実施できれば、その代替としてのオンライン授業の必要性はなくなる。対面による先生からの指導があるからこそ、子供たちはしっかり学習するとの授業観・指導観が教員のみならず、子供にも、そして保護者にも根付いている。

しかし、通学に公共交通機関を利用する国立などの附属学校では、この状況を踏まえ、再び分散登校に切り替えたり、自治体によっては、感染への不安がある場合には自宅学習を選択できる「選択登校制」を取り入れたりし始めた。

雲間に光明を見いだす ――Orient(O:方向付け)――

6月11日に開催された「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第9回)」で配布された会議資料2「新型コロナウイルス感染症を踏まえた、初等中等教育における これからの遠隔・オンライン教育等の在り方について」の内容は衝撃的だ。

その標題には「(検討用資料)」と記載されていたが、「ポストコロナ」の段階における「基本的な方針」として「対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育のハイブリッド化による協働的な学び」を新しい教育の様式として描き出そうとしている。

しかも、履修主義と修得主義等の考え方を柔軟に併用していくことで「多様な子供たちが誰一人取り残されることなく社会とつながる個別最適化された協働的・探究的な学びの観点から取組を進める」と明記する。

わが国の教育制度の根幹に関わる問題が提起されたのだ。

そしてこの資料が、7月2日に開催された第126回中教審初等中等教育分科会の資料3-1としても配布された。標題が「新型コロナウイルス感染症を踏まえた、初等中等教育における これからの学びの在り方について~遠隔・オンライン教育を含むICT活用を中心として~」と変更され、数カ所において加筆されてはいるが基本のコンセプトは引き継がれている。

まさにジェット戦闘機に搭乗して雲の中でコロナ禍と闘い続けているさなかに、今、編隊長である校長は一瞬明るい雲間を発見した。そこに新たな可能性を見いだすことができると感じる感覚こそがOODAな経営感覚であって、その感覚をもってすれば、校長が今、下すべきD(Decide:決定)が明確になる。ちゅうちょしていたら、明るい雲間はたちどころに見えなくなってしまう。

新しい夏休みを創る ――Decide(D:決定)――

せみ時雨、ひまわり、ラジオ体操、海水浴、地域行事、お盆(帰省)等々の言葉でイメージされる昭和・平成の夏休みは、ノスタルジーであってもう描くことはできないのかもしれない。コロナもそうだが、気候変動によるここ数年の異常気象によって、特に夏は甚大な被害が全国で発生している。

このような状況下にあって令和の時代が重ねていく夏は、まさに国が示す「『対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育のハイブリッド化による協働的な学び』を新しい教育の様式として描き出す」ための好機であって、さまざまな取り組みをまさにアジャイルな開発手法で試すことができる。

その手始めとして、学校はここ数年夏の定番の話題となっている「夏休みの宿題」をオンラインで行ってみたらどうだろう。「夏休みの宿題」は長期休業において子供たちの学力保障とともに、学習習慣の確立を図ることを狙いに出されてきたものだが、近年その形骸化が指摘され、効果についても疑問視する声がある。これをオンラインで実施すれば、臨時休校中に直面した課題を学校が今一度整理でき、2学期以降もいつ何時に再び休校となった際に備えた、絶好のシミュレーションともなる。

ここで言うオンラインとは、WEB会議システムを活用した双方向授業のことではない。非同期にこそオンラインの一番のメリットがあって、子供たちが自分で学習計画を立て、各自の生活リズムの中でそれぞれに課題に取り組む。

課題そのものの提出も大事だが、それ以上に子供たちが行う活動の振り返りがメタ認知活動として極めて重要となる。教員もさまざまな場所から、自身ができるタイミングで子供たちの活動に共感的理解のコメントを返せば、子供たちの学習意欲は長期の休業中にあっても醸成される。

そして夏休みが終われば、子供たちは再び学校へ登校するが、コロナの感染拡大状況が不透明な中、分散登校を計画的に取り入れてみることは不可能だろうか。「対面指導と遠隔・オンライン教育のハイブリッド化による協働的な学び」を実施せざるを得ない状況をあえて作り出して、さまざまな実践知を獲得することは、今後の大きな財産となる。

これらのAction(A:行動)は、学校リーダーのDecide(D:決定)にかかっている。もうすぐ、OODAでアジャイルな夏休みがやってくる。


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