城西国際大学大学院研究科長・特任教授 鈴木 崇弘
ビジネスにおけるキャリア形成では、I型、T型、π型、H型人材という類型がある。これまでは1つの高い専門性を有するI型人材が求められたが、近年は技術や社会が急速に変化するため、必要とされる能力も短期で変わり、I型人材では生き残れないといわれる。これは教員も同様なのではないだろうか。
求められていることが変化
教員は教えることの専門家だ。その意味ではこれまで、まさにI型人材であればよかった。しかし今の社会において、教員は「学校の内外のハブ」であり、「生徒や学生と社会を結ぶ結節点」だ。
また、STEAMやEdTech、オンライン授業などの新しい教育を考えた場合、教員は従来の教育法の良さを生かしながらも、新しい方向性と可能性を絶えず学び、教育現場に取り入れていくことが求められている。
それを考えると、教員は専門性を持ちながらも、社会全体の変化や方向性を理解して授業することなどが必要になってきており、その傾向は今後さらに加速化していくだろう。
T型人材とπ型人材
つまり教員も、T型あるいはπ型人材であることが必要なのだ。
T型人材とは、専門分野を1つ持ち、それに加えて、より広い分野の知見を兼ね備えている人材のこと。
π型人材とは、2つ、あるいは複数の異なる専門分野を持ち、分野を横断した独創的な思考によって、その能力を発揮する人材のことを指す。
教員がT型あるいはπ型人材であるためには、大学院修了の必須化など教員免許取得方法の変更や、多様な経験をした人材がより容易に中途で教員になれる仕組み、さらに教員免許更新の仕組み変更などを行わなければならない。
T型あるいはπ型の人材が教員になるという、逆の仕組みづくりも必要だろう。
H型人材
さらにこれからは、H型の教員も求められる。
例えばコロナ危機の影響で、オンライン教育が注目を集めているが、ある意味「閉鎖された空間」である学校であっても、オンラインを活用すれば、外部のさまざまな方の話を聞く機会をつくれる。
話す側は世界のどこからでも参加できるし、またネット上には、国内外の多種多様なコンテンツがある。まさに学校は、人材や情報を縦横無尽に活用できる。
その際に重要になるのがH型の教員だ。H型人材とは、自らが1つの専門分野を持つと共に、他の専門分野を持つ人材や情報のつながりをつくれる人材のこと。
H型人材が学校で力を発揮できるようにするには、学習指導要領や雑務の縛りを軽減し、ある程度、自由に学び続けられる環境や雰囲気が必要だろう。
いずれにしても、学校と教員は大きな変化を迫られている。