少人数学級 学級規模の見直しは当然必要だ(藤川大祐)

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

学級規模は多忙さと密接に関係

教育新聞電子版8月13日付は、本紙が実施した意識調査で、公立学校教員の96.6%が少人数学級の実現を求める回答をしたことを報じている。

現在、小中学校の学級規模は原則として最大40人、小学校1、2年生は35人となっている。1980年に最大40人となって以降、約40年にわたって小学校3年生以上の学級規模の基準は基本的に変更されていない。欧米諸国では30人以下を基準とするのが一般的であるのと比較すると、日本の学校の学級規模は明らかに大きい。

学級規模が大きいことは教員1人当たりの児童生徒の数が多いことを意味している。日本の教員が非常に多忙であることと密接に関わっていると考えられる。

OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018によれば、日本の小中学校の教員の労働時間はOECD加盟48カ国・地域中最長であり、事務業務や中学校の課外活動の時間、授業準備の時間などが長い。個々の児童生徒に関わる事務作業が多いこと、個々の児童生徒に合わせた授業準備時間が長いことが、教員の多忙につながっていることがうかがわれる。

課外活動についてはそもそも教員の業務によって担われている点が問題であるが、教員1人当たりの生徒数が少なければ教員の負担は減るものと考えられる。

データに直接表れないところでも、いじめ・不登校などの課題への対応や発達障害などの特別な支援を要する児童生徒への対応において、学級担任を中心に児童生徒数に応じた負担が求められている。

一人一人に合わせた指導が可能に

近年、教員の多忙化に注目が集まり、学校における働き方改革が喫緊の課題となっている。学級規模を欧米の学校並みとし、教員1人当たりの児童生徒数を減らすことがまずは必要であった。教員の多忙の問題の抜本的な解決に向けた基本的な対応として、学級規模の見直しを今からでも迅速に進めてほしい。

以上、指摘した点は、通常学級だけの問題ではない。特別支援学級や特別支援学校においても、個々の児童生徒への手厚い対応が求められており、教員1人当たりの児童生徒数の見直しが検討されるべきだ。

現在、学級規模の見直しが改めて注目されているのには、コロナ禍における分散登校などによって、思いがけず少人数教育が広く実施されたことが契機となっている。密集を避けるために1教室20人以下での授業が行われた結果、多くの教員が少人数学級での指導のしやすさを実感したことだろう。

30人以上の学級ではなかなか個々の児童生徒の様子を把握しきれないが、20人以下であればかなりの程度把握できる。そうなれば、一人一人に合わせたきめ細かい指導が可能となる。学級規模の縮小が教育の質を大きく向上させることが、コロナ禍において多くの教員に実感されたものと言える。

学級規模の縮小には弊害も

現在、乾彰夫氏ら「少人数学級化を求める教育研究者有志」が少人数学級の速やかな実施を求める署名活動を行っている。乾氏らが提案するように、早急に30人学級に、その後速やかに20人程度に移行するというのが、現実的かつ必要な移行プランであろう。新型コロナウイルス感染症拡大のリスクを低減させるためにも、教育の質を高めるためにも、教員の負担を減らすためにも、ぜひこうした少人数学級化を実施してほしい。

ただし、一部ですでに指摘があるように、学級規模の縮小に弊害があり得ることにも注意が必要だ。教員の目が届きやすいということは、学級規模が小さくなり互いのことが見えやすくなり、教員や他の児童生徒から距離を置きたい児童生徒にとっては自らの安全に対する脅威の深刻化を意味する。教員の側から見ても、学級規模の縮小は新たに学級担任となる教員が多く必要となることを意味するのであり、学級担任の質の低下が問題となる可能性がある。

こうしたことを踏まえれば、単に学級規模を見直すだけでなく、学級の在り方を閉じたものから開いたものに変えていくことも検討される必要があることが分かる。

複数の教員が担任の立場で生徒に関わる

私は、茨城県取手市の中学生いじめ事案の再発防止策の策定に関わった。この再発防止策の中では、学級担任と被害生徒との関係の在り方に深刻な課題が認められたことを踏まえ、複数の教員が担任の立場から生徒に関わることができる複数担任制あるいは全員担任制の導入を提言している。

このように複数の教員が学級に関わる方式は東京の千代田区立麹町中学校などで取り組まれており、学級間の競争や担任の「当たり、外れ」といったことから脱却して、誰も排除しない学年経営につながっていることが報告されている。

現在、中教審では小学校高学年における教科担任制の導入が議論されている。これも、複数の教員が学級に関与する方向の施策だ。このように複数の教員が学級に関与することに加え、児童生徒の活動も学級に閉じるのでなく、他の学級、他の学年、さらには学校外との交流を進め、学級内の人間関係が固定されたものとならないようにすることも必要だ。


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