動き始めた少人数学級 未来志向の教職員配置を(渡辺敦司)

教育ジャーナリスト 渡辺 敦司

1年2カ月ぶりに始動した政府の教育再生実行会議で、少人数学級の計画的整備が検討課題として急浮上してきた。教職員定数を巡っては2006年以来新たな改善計画が策定されず、民主党政権でさえ小学校1年生しか35人学級を実現できなかった。安倍晋三首相の突然の辞任で先行き不透明になったものの、新型コロナウイルス感染症という奇禍を奇貨に変えることができるだろうか。

コロナ禍で現実味

少人数学級の必要性がクローズアップされたのは、コロナ禍による最長3カ月の臨時休校措置が明けても、クラスの半数ずつなど分散登校を余儀なくされてからだ。Withコロナ段階でも、身体的距離を確保することが求められる。

さらに、休校中の遠隔・オンライン教育の必要性から1人1台の「GIGAスクール構想」が前倒しされ、授業でも普段使いが可能になる見通しとなったことから、端末も置けるよう机を広げる必要性が出てきたことも後押しする。教室面積を広げるより、1クラスの人数を減らした方が現実的だからだ。

今年度の第2次補正予算で、小中学校の最終学年を少人数で編成するため一気に3100人の教員加配が実現したのも画期的だった。コロナ禍という非常時でもなければ、決して実現できなかった数字だろう。

当初予算では3201人の改善が盛り込まれていたが、2000人の加配定数見直しを除くと1726人の純増にすぎなかった。

新学習指導要領の全面実施で増加する小学校英語の授業時数に対応した専科教員の加配でさえ、18~20年度の当初予算で単年度査定により1000人ずつが何とか認められてきた経緯がある。

再生どころか疲弊

学校再開後も教職員は、感染防止対策や不足した授業時数の確保はもとより、児童生徒の心の安定、さらには学びのハイブリッド化への対応などに追われている。とても働き方改革どころではない。

そもそも16年度教員勤務実態調査で10年前(06年度調査)に比べて勤務時間が増加し、小学校で3割、中学校で6割もの教員が過労死ラインを越えて働く過酷な勤務実態を常態化させてしまったのは、折しもその間、定数改善計画が策定できなかったことも大きな要因だったろう。

第1次安倍政権(06年9月~07年9月)も含め、教育は再生するどころか疲弊するばかりだった――と言ったら皮肉に過ぎようか。

痛切な現場の願い

そんな学校現場が少人数学級を強く望んでいることは、賛成96.6%、反対ゼロという本紙の調査(電子版8月13日付)を見れば明らかだ。

電子版の読者投票Edubateの「あなたは、少人数学級をいつまでに実現すべきだと思いますか?」(電子版8月11日付)でも、「今年度内」が36%と3人に1人を占め、「来年度から」「3年以内」を合わせると95%となった。一刻も早く少人数学級にしてほしい、という痛切な願いの表れだろう。

中央教育審議会の初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」では8月20日、答申案の作成に向けた骨子案の検討を始めた。そこでは依然として「義務教育9年間を見通した教科担任制」による定数改善を中心にしており、少人数学級に関しては「教室等の実態に応じて少人数編成を可能とするなど」と、極めて控えめな表現にとどめている。

9月末に予定される中間まとめに向け、積極的な文言が盛り込まれることを期待したい。

「非常時」織り込んで

先の骨子案では表題に「令和の日本型学校教育」の構築をうたい、総論ではポストコロナの「ニューノーマル」(新しい日常)を展望している。臨時休校で学校が「福祉的な役割をも担っていることが再認識された」とも指摘した。

今年で10年目を数える東日本大震災でも、被災した子供たちの学力のみならず心身を支える学校の重要性が強く認識された。その後も各地で自然災害は多発しており、今般のコロナ禍のような非常事態は決して「非常」ではない。非常時を織り込んだ教職員配置の在り方が求められよう。

平常時には過剰人員となるわけでは決してない。今までが不足していたのだし、余裕ができれば生徒指導対応や、研修などの資質能力向上に、大いに振り向ければよい。

必ずしも学級定員の大幅引き下げに拘泥する必要もなかろう。平時はチームティーチングやグループワークなど柔軟な指導体制を可能にし、非常時には20人学級に編成できるような体制も一考に値する。

そもそも児童生徒の実態や教員の指導力を無視して一律に学級定員を決めるやり方は時代遅れではないか。もちろん算定基準としては35人なり30人なりにしておいて、後は総額裁量制に任せればいい。

コロナ禍に突然の首相辞任という異常事態だからこそ、平時には抑えられていた大胆な発想で危機を突破できるような、未来志向の教職員配置の在り方を模索してもらいたい。


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