なくなった教育実習 オンライン教育の「てこ」に(鈴木崇弘)

城西国際大学大学院研究科長・特任教授 鈴木 崇弘

本当にやむを得ない?

教育実習について文科省は8月11日、今年度は実習生の受け入れが困難な学校が少なからずあることが見込まれるとして、なしでも教育免許の取得を認めるとした(電子版で同日既報「今年度に限り教育実習なしも容認 受け入れ困難で特例」)。コロナ禍が「日常化」する中で、感染を抑制するためには、やむを得ないように思えるかもしれない。

だが、本当にそうだろうか。学ぶことと教えることには相互補完性があるが、その一方だけで他方が理解できる、対応可能かというと、必ずしもそうではない。

また、教員志望者にとって、実際に教育現場で教えるのは、非常に貴重な体験のはずだ。

オンライン教育の現状

この相矛盾する状況の中で、一つアイデアが浮かんだ。

コロナ禍で、多くの大学では春学期は何らかのオンライン授業(全面オンラインおよび対面・オンライン併用など)を行った。秋学期には多くが対面授業を再開するだろうが、オンライン授業も継続されそうだ。

教員も大学生も、かなりオンライン教育の経験を積んだといえる。

筆者も、自身の所属大学が今年度、オンライン授業を一斉に実施することになり、短期間で関連アプリなどを研究し、トライアンドエラーでオンライン授業の仕方を学生らと共に学んだ。学生も筆者も当初は不安だったが、お互いに学び合い、何とか対応できた。

全国の小中高でも、オンライン授業の実施に苦労したところは多い。Wi-Fi環境なども大きく影響しているようだが、何より校内や地域にICTなどの専門家がおらず、オンライン授業を推進していく人材もいなくて、その意識が高まらなかったなどの問題があったからだろう。

筆者が見学した小学校は、適切な推進者が存在し、そのような新しい試みを挑戦していく環境があり、オンライン授業が円滑に行われていた。

筆者の提案

以上のことを踏まえて、筆者としては、次の提案をしたい。

それは教育実習の機会を活用して、オンライン教育にそれなりの経験のある大学の「学生」と「教員」、そして「小中高の教員」が一体となって協力し合い、小中高でのオンライン教育を推進するということである。

オンライン授業の「経験」のある学生が教育実習生として、実習先の教員とタッグを組んで、そこのオンライン教育の導入推進や改善に努めるのだ。それを実習生の送り込み元の大学教員がサポートすればいい。

危機をチャンスに

さらにこの仕組みには、次のような良い点がある。

最近SNSなどで話題になっているように、大学生から「小中高でも授業が再開されているのに、大学は今も閉鎖。入学以来、先生の顔も、同じく4月に入った友達の顔も見たことがない」「授業の課題が多過ぎる。書くことない」「毎日パソコンを見続け、疲れる」などの意見が出されていて、大学のオンライン授業に対する問題と課題が浮き彫りになってきている。まさに学生はそれを感じ、実体験している。

その点からも実習生は、実習先の学校でも、オンライン授業で児童生徒に起きうる問題点などを踏まえて対応できる可能性があり、授業を受ける側の立場に立った新しいオンライン授業を工夫し、展開できる可能性もあるのだ。

そして、その「経験」ある実習生の力を借りながら、実習先の教員も経験を積み、今後の広がりや可能性を生み出していけるのではないだろうか。

コロナ禍での教育の危機的状況を、逆にチャンスに生かしてはどうだろう。文科省にもそのような教育実習の可能性を認め、推進してもらいたいと思う。


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