教師は「美しい日本語」を 不易の遺産の継承者たれ(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

国語は乱れていないのか

文化庁が実施する「令和元年度 国語に関する世論調査」の結果が公表された。それによると、「国語が乱れていると思うか」との質問に「乱れていない」と答えた人の割合が30.2%と、過去5回の結果の中で最高の数字であるとともに、1999年度(10.3%)との比較で見ると3倍も増加している。今後、わが国のグローバル化が進む状況の中で、この結果を教師としてどう捉えたらよいのであろうか。

「乱れていない」と思う理由として「言葉は時代によって変わるもの」(39.0%)、「多少の乱れがあっても根本的には変わっていない」(29.9%)が上位を占めている。この傾向は過去5回の調査でも同様であった。

教育に不易の要素と流行の要素があるように、言語にも同じことが言える。まさにこの2つの理由が象徴している。教師が大切にしていかなければならないのが「不易」の要素である。言い換えれば「基礎・基本」であり、伝統文化と言ってもよい。それではこの「不易」の要素は守られているのであろうか。

「読書時間0分」の大学生たち

気になるのが若者の読書量である。2017年に文部科学省が民間の研究所に委託して行った調査(「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」)によれば、小学生から高校生までの読書時間は、年齢層が高くなるほど減少し、ここ数年間では「0分」と全く読書しない者の割合が高くなる傾向が続いている。

18年に全国大学生活協同組合連合会が行った「学生生活実態調査」によれば、大学生の読書時間は、1日の平均が23.6分だった。さらに1日の読書時間が「0分」の割合が53.1%で、読書をしない大学生像が浮き彫りとなった。成人するまでに学ぶべき「不易」の要素であり、国語の基礎・基本である読書の実態がかくのごとしである。

一方、国立情報学研究所の新井紀子教授が指摘し、中教審の答申でも取り上げられた、長文の意味が分からない、あるいは読み飛ばすといった読解力不足の子供が増えていることも見逃せない。

正しい日本語に留意しながら子供に接する

今年度小学校から始まった新学習指導要領は、確かな学力の育成に当たり、特に重要となる学習活動として言語活動を挙げ、その基盤となる資質・能力として、言語能力の育成を第一に挙げている。また、国語科を要とし、全教科等において言語活動を充実させることとしている。

学校教育において育成する言語能力は、まさに「不易」の国語である。その意味からも、「根本的には変わっていない」要素を持つ「不易」の国語を指導する教師の責任は重大と言えよう。

さらに、言語能力の指導は全教科等において全ての教師が指導することから、教師自身の、言語能力を普段より磨くことが大切となる。そのため教師は、まずは言語環境の整備に努め常に正しい日本語に留意しながら子供に接してほしい。

「学習指導要領解説」の総則編でも「教師は正しい言葉で話し、黒板などに正確で丁寧な文字を書くこと」など6項目にわたりその配慮事項が示されている。最近は20代を中心に若い世代の教員が増えているので、校長はじめ管理職はその各事項が実施されるよう十分留意する必要がある。

ここで提案したいのは、教師は正しい日本語だけでなく、「美しい日本語」も意識してもらいたいということである。

文学界には美文と呼ばれる文章を書く作家が今も昔も多く存在する。また、俳句など古典文学の中には季語や言い回しの中に多くの美しい日本語がある。学校で発行する学校だよりなどで教師による「私が選んだ美しい日本語を使った文学作品」などのコーナーを設けて紹介するのもよい。

教師には「日本語は乱れていない」という意識を持つ前に、先人が残してきた不易の遺産の継承者という自覚を持ってもらいたい。


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