コロナ禍で変わる中国の留学 日本にとっては好機に(鈴木崇弘)

城西国際大学大学院研究科長・特任教授 鈴木 崇弘

中国人にとっての留学

世界の留学生総数は現在約530万人。日本にも30万人超の留学生がいる。うち中国人留学生は、全世界で約160万人、米国で約41万人(今年7月)、日本でも約12万5千人(昨年)がおり、大きな割合を占め、その動向は世界の「留学生市場」に大きな影響を与えている。

中国人にとって留学は、中国国内での戸籍取得などの優遇や、金銭的支援など、さまざまな優遇政策を得られる可能性が高まり、国内での居住移動やキャリア向上などに直結する重要な機会になる。なお、中国での留学経験者は「海亀族」と呼ばれている。

米国の厳しい対応

このような中、米国政府は今年、中国人留学生らに対して、次のような厳しい対応や政策を取り始めている。

    • 5月 上院議員が理系中国人留学生の入国規制を提案。
    • 6月 中国人民解放軍と関係がある、大学院レベル以上の中国人留学生・研究者の入国禁止、および既滞在者のビザ剥奪の政府決定。
    • 7月 中国共産党党員と家族(約9200万人)の入国規制検討。(後に撤回されるが)秋の新学期の全授業をオンラインにし、留学生の国外撤去方針を発表。オンライン受講のみの留学生は入国制限との方針発表。

全世界における中国人留学生のうち、米国留学生は約4分の1。米政府のこれらの政策・方針は、中国人留学生に大きな影響を与えている。

米国人気が低下

この米国の対応は、中国の経済発展、特にテクノロジーの急速な発展(中国政府・共産党の発展への強い意志なども含む)に対する、米国の脅威感と危険視の表れであると共に、科学技術や情報などの流出防止対策強化などが取られてきているということだ。

特にトランプ大統領は反外国人、特に反中国意識が強いことも背景にはあろう。だが、大統領選の行方にも関係するが、誰が大統領になろうとも、中国人留学生らに対する政策の大きな方向性は変わらないだろう。

また、中国人留学生から見ると、昨年から米国人気は低下しており、英国への人気が高まっている。コロナ禍対応は異なるが、英国、カナダ、オーストラリアは、現時点では特別な中国人留学生対応をしていない。

選択肢に日本が浮上

中国の大学も近年では教育・研究レベルがかなり上がってきており、中国国内での受験競争も激化している。他方で、先述したように中国社会における留学の意味があり、政府支援ではない個人留学が、今後ますます増える可能性もある。

このような状況を踏まえると今後、中国人留学生の「世界における流れ」が変わる可能性がある。

その変化は、主に英語圏でのものと考えられるが、欧米での収束がいまだ見えないコロナ禍の現状や、そこにおける外国人対応などを勘案すると、これから数年は、中国人を含む欧米での留学生の数は、抑制的になることが考えられる。

他方、さまざまなデータからも、外国人にとって、日本は衛生的で安全・安心というイメージが高い。

昨年の入管法改正も含め、外国人を受け入れる社会的雰囲気があること、大学などの授業料や生活費が留学生にも相対的に低いこと、バイトができることなどの利点がある。特に中国人留学生にとっては、言語習得の容易さなどもある。

これらを考えると、日本を選択する留学生が増える可能性はある。

バージョンアップの好機

日本の高等教育が国際化するには、まだまだ多くの問題を解決する必要があるし、もしコロナ禍でオンライン教育が継続される場合には、欧米などの高等教育との比較優位をどこにつくれるかなど、さまざまな問題や課題がある。

また、来日する留学生の多くが、日本での生活や文化に触れることを重視しているのを考えると、今後のオンライン教育の広がりと展開も踏まえて、その優位性を生かした日本の高等教育をどうしていくか、政府も教育機関も再考、再構築する必要があるだろう。さらに科学技術の流出防止など、より厳格な対策も必要になる。

このように考えていくと、今般の米国の対応などは、日本にとっては「災い転じて福となす」というように、不十分だった国際化なども含めた、日本の留学生政策、ひいては高等教育全般をバージョンアップさせる好機だと考えるべきだろう。


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