普通教育の新学科 行き届いた検討と準備を(工藤文三)

教育新聞論説委員 工藤 文三

新学科に「学際科学」「地域社会の課題解決」

2019年5月に示された教育再生実行会議の第十一次提言では、高校普通科における教育改革の推進が重要であるとし、その一つの方策として、「教育理念に基づき選択可能な学習の方向性に基づいた類型の枠組み」を示す提言を行った。類型の例として、自らのキャリアをデザインする力の育成、リーダーとしての素養育成などの4つが示された。

その後、中教審のワーキンググループで審議され、本年の7月には論点整理が示された。その後の審議の状況は、9月の教育課程部会にも報告されている。

検討されている新たな学科とは、「普通教育を主とする学科」の一つとして設置されること、現在も各学校で行われている特色あるコースや類型を否定するものではないこと、高校として共通に履修する内容を前提とした教育課程となることなどが示された。

新たな学科として「学際科学的な学びに重点的に取り組む学科」「地域社会が抱える課題の解決に向けた学びに重点的に取り組む学科」「その他特色・魅力ある教育を実現すると認められる学科」の3つが示され、育成される資質・能力像が示された。

存在意義を明確にできるのか

新たな学科がどのように位置付けられるのか、まだ明確ではない。設置基準では「専門教育を主とする学科」には、「農業に関する学科」ほか計15の学科が示されている。この形に倣って、「普通教育を主とする学科」の中に、「普通教育に関する学科」に並んで新学科を設置する形になるのであろうか。

新学科を構想する場合、学科にふさわしい教科・科目の構成と履修条件の設定が必要となる。専門学科の「農業」「工業」「商業」「水産」などの学科は、それぞれの教育内容は一定のまとまりを持ち、他学科との区別も明確である。これに対して「学際科学」や「地域社会が抱える課題」というまとめ方で、学科としての存在意義を明確にできるであろうか。

学科として自立できるためには、他の学科との違いや関係が分かる説明と、独自の教育内容が分かる説明の両者が必要である。前者は、他の学科を含めた学科構成における位置や関係であり、後者は当該学科の教育内容の独自性を示している。

コンセプトにあった教科構成は可能なのか

新学習指導要領では、各学科に共通して必履修させる教科・科目等は、10教科および総合的な学習の時間で構成され、総単位数は38単位となっている。卒業までに履修させる単位数は74単位であるから、少なくとも36単位分について、各学科に共通する教科も含みながら、当該学科にふさわしい教科・科目を準備する必要がある。

また、専門学科では、専門教科・科目の必履修単位数は「25単位を下らないこと」とし、専門学科としての履修に条件を設けている。新学科について、このような履修条件の設定を行うのかどうかも問われる。

最終的に課題となるのは、新学科としての教科・科目の構成とそれぞれの目標・内容の設定である。普及・定着を促すためには、学習指導要領などに教科・科目とその内容を示すことが望ましい。ただ、「学際科学」や「地域社会が抱える課題の解決」というコンセプトで系統性や関連性のある教育内容のまとまりと教科構成が可能であろうか。

安定した入学定員の確保と進路の実現が必要

教科・科目の設定の後には、授業のための教科書や教材の作成、学習評価が必要となる。一般に授業者が、教科・科目の指導計画を作成し、授業を構成していくためには、何らかのよりどころとなる知識が必要である。

授業者は、定評のある図書や資料などによりながら、指導内容を把握・理解し、教材化する手続きを踏む。根拠になる知識や参考になるテキストがあって初めて、指導内容の根拠付けができ、安心して授業構成に向かうことができる。「学際科学」や「地域」の教育内容に関する裏付けとなる知識、テキストの所在についても目配りが必要と考える。

最後に、持続可能な学科となるためには、安定した入学定員の確保と進路の実現、各都道府県における高校の配置やニーズ、教員の指導体制さまざまな条件と要素に配慮する必要がある。制度設計と具体化に当たっては行き届いた検討と準備を期待したい。


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