「暴力行為」の低年齢化 保護者の非社会性が要因か(細谷美明)

教育新聞論説委員 細谷 美明

小が発生件数・加害者数で過去最高

文科省は先月22日、2019年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果を公表した。今回注目すべきは「暴力行為」である。小学校が発生件数・加害者数共に中学校を抜き過去最高の数字となった。暴力行為の発生件数は、小学校が4万3614件で昨年度に比べ約7000件の増加である。中学校は2万8518件で昨年度に比べ約800件の減少である。このことも驚くが、その内訳にも驚かされる。前年度に比べ暴力行為に及んだ児童生徒の低年齢化が進んでいることである。

小学校の前年度と今回の学年別加害児童数の割合(%)を比較すると、小1(10.7→11.9)、小2(13.9→14.8)、小3(15.8→16.7)、小4(18.5→18.0)、小5(20.4→19.6)、小6(20.7→19.0)と暴力行為が高学年から低学年に移行しているのが分かる。

本稿において昨年この問題を取り上げた際、その原因を対戦型オンラインゲーム参加者の低年齢化が大きく影響しているのではないかという意見を掲載した。コロナ禍により家に引きこもる機会が増えたことでゲームに依存する子供はますます増加している。今後も低学年層の暴力行為の要素は減少しないものと考える。

ストレス耐性が身に付いていない

これ以外の原因を考えてみたい。今から20年前に小学1年生が学校生活に適応できず、担任や他の児童とトラブルを起こす問題が全国各地の小学校で発生し、「小1プロブレム」と呼ばれた。その原因については文科省をはじめ全国の教育委員会や各研究機関などで調査・研究され、児童にストレス耐性や基本的な生活習慣が身に付いていないこと、家庭の教育力の低下、児童の自己中心的傾向、担任の指導が適切でなかったことなどが報告された。

その後、文科省はこれらの報告に基づき、幼保連携、幼少接続を重視した法改正や取り組みを奨励し現在に至っている。それでは「小1プロブレム」は解決したのかと問われれば、今回の問題行動調査の結果を見る限り「NO」と言えよう。というよりも、同調査のいじめに関する結果でもそうだが、学校現場がよりきめ細かく子供たちを観察して、実態がより鮮明になったと言った方が正確かもしれない。

孤立化に向かう家庭

このように、学校がこの20年間さまざまな取り組みを続けている中で、もう一方の保護者はどのような取り組みを行ってきたのだろうか。15年にベネッセ教育総合研究所が行った「幼児の生活アンケート」は、1995年から5年ごとに乳幼児のいる家庭を対象にその意識や生活の変化を経年調査したものだ。それによれば、この20年間で平日(園以外の時間帯)における幼児の遊び相手の第1位が「きょうだい・友達」から「母親」に変わっていることが分かった。そのことに伴い、集団生活への適応に対する保護者の意識にも変化が見られ、「子育てに力を入れていることは何か」の設問に対し、「友達と一緒に遊ぶこと」が20年前の25.6%から19.6%に減少している。

さらに通わせる園に対する要望も、「集団生活のルールを教えてほしいか」に対し、20年前では79.8%が肯定していたのが、2015年では72.2%に減少している。つまり、学校が幼児段階から子供の社会性を集団活動により育てようとしている一方で、家庭はその逆方向である「孤立化」に向かっているのである。この傾向が小学校低学年時の一部の児童にみられる集団不適応(登校渋り、暴力行為など)に向かわせているのではないかと指摘する有識者もいる。

家庭の協力が中等教育以上に必要とされる幼児教育において、保護者の非社会性の傾向は黄信号だ。幼稚園・保育所を直接管轄する市町村教育委員会は、家庭教育に視点を当てた対策をすぐにでも講じるべきであろう。


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